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運動習慣がある人は知らないうちに糖尿病前症になっている恐れが少ない

(2017年4月) "Journal of Diabetes Research" に掲載された青島大学の研究で、運動(余暇に行う身体活動)をする習慣がある人は無自覚なままに糖尿病前症になっていることが少ないという結果になりました。

糖尿病前症とは

糖尿病前症とは、糖尿病と診断されるほどではないが血糖値が正常範囲より高いという状態のことで、耐糖能障害(IGT)や空腹時血糖異常(IFG)のある人、あるいはIGTとIFGの両方に該当する人が糖尿病前症とみなされます。

糖尿病前症を放置しているとかなりの確率で2型糖尿病へと進行しますが、糖尿病前症の時点では症状が無いのが普通です。 糖尿病前症の人でもガン・心臓病・脳卒中のリスクが増加します。

研究の方法

糖尿病や糖尿病前症と診断されていない20~65才の男女8千人超を対象に、運動量に関するアンケート調査とHbA1c値(糖尿病前症の代替的な診断基準)の検査を行いました。 そうして得たデータを用いて、運動量と糖尿病前症であるリスク(オッズ比)との関係を調べました(横断研究)。

HbA1c値が5.7~6.4%である場合を糖尿病前症とみなしました。 運動量の単位としては「MET時間」を用いました。

データの分析においては、年齢・性別BMI・教育水準・喫煙習慣・飲酒量・食生活・高血圧の有無・運動以外の身体活動量といった要因を考慮しました。

METとは

「MET」とは「Metabolic Equivalent of Task(身体活動による消費カロリー)」のことです。 「MET時間」は「MET×経過時間」で計算し、例えば3METの運動を2時間続ける(3MET×2時間)と6MET時間の運動量となります。

身体活動が激しいほどMETの値は大きくなります。 例えば「睡眠」のMETは0.9で「テレビ視聴」のMETは1.0ですが、ジョギングのMETは9.0で縄跳びのMETは10.0です。

結果
8千人超のうち 1,914人が、自分でも知らないうちに糖尿病前症になっていました。
データ全体
運動をしないグループに比べて、総運動量(激しさは問わない運動量)が多い(*)グループは糖尿病前症のリスクが22%低くなっていました。
(*) 1週間あたりの運動量が28MET時間を超える。
激しい運動に限ると、運動量が少ない(*)グループでのみ、運動をしないグループよりも糖尿病前症のリスクが28%低くなっていました。 中程度以上の量(†)の激しい運動と糖尿病前症のリスクとの間には統計学的に有意な関係が見られませんでした。

(*) 1週間あたりの運動量が16MET時間以内。

(†) 1週間あたりの運動量が16~32MET時間または32MET時間超。

激しくない運動に関しては、運動量と糖尿病前症のリスクとの間に関係が見られませんでした。

45才未満に限った分析

45才未満のデータに限った分析では、①総運動量が多い場合、②激しい運動の量が多い場合、および③激しい運動の量が少ない場合にのみ糖尿病前症のリスクが低くなっていました(低下幅は-22%、-39%、-28%)。

激しい運動の量が中程度の場合にはリスクが下がっていませんでした。 激しくない運動は量にかかわらず、糖尿病前症のリスクとの間に関係が見られませんでした。

45~65才に限った分析

45~65才のデータに限った分析では、総運動量が多い場合にのみ糖尿病前症のリスクが低くなっていました(-27%)。 運動の激しさ別の分析では、統計学的に有意な結果は一切得られませんでした。

結論

研究チームは「運動により糖尿病前症のリスクを減らせる可能性がある。 今後、大規模なコホート研究を複数行って今回の結果を確認する必要がある」と結論付けています。

留意点
研究チームは今回の研究の弱点として次の3点を挙げています:
  1. 横断研究である。
  2. 糖尿病前症の有無の基準としてHbA1c値を用いた。
  3. 運動量が各人の自己申告に基づいている。