祖先の農耕スタイルと男性の癌リスクの関係

(2015年3月) "Social Forces" 誌に掲載されたオタゴ大学(ニュージーランド)の研究によると、新石器時代に犂(スキ。 家畜に引かせる農具)を採用した社会の末裔では鍬(クワ。 人力で畑を耕すのに用いる)を用いるなどをしていた社会(狩猟採集社会も含むのかは不明)の末裔に比べて、男性がガンになるリスクが高いと考えられます。
Wikipedia によると、新石器時代の始まりは紀元前 8,500年頃で、この時期に農耕や動物の家畜化が始まりました(犂が発明される条件は存在していた)。 一方、犂が初めて登場したのは、これもWikipedia によると、紀元前6世紀頃のメソポタミアである可能性があります。
ガン発生率の確認

この研究ではまず、世界中のデータを用いてガンのうち性的な種類のもの(おそらく乳癌や卵巣ガン、前立腺ガンなど)を除く20種類の発生率を調べました。 その結果は、女性よりも男性の方がガンの全般的なリスクが高いというものでした。 この結果は従来の考えと合致します。

ところが、癌リスクの性差の程度には地域によって相当なバラつきが見られました。

農耕スタイルとの照合

そこで研究者は、このバラつきの根底には進化論的な要因があるのではないかと考え、癌リスクの性差の程度を、各地域の農耕のスタイルに関する人類学的なデータと照らし合わせてみました。 すると、祖先がスキを使用していた人たちが人口の大部分を占める国では、女性に対する男性の癌リスクの比率が高くなっていました。

考えられる理由
研究者は次のように考えています:
「スキはクワを扱うよりも重労働であるために、スキが導入された社会ではスキの扱いに必要な上半身の筋力が優れた男性が社会的に有利だったのではないでしょうか。 そして、このような男性の子孫は遺伝的にテストステロン(男性ホルモン)の量が多い傾向にあるために、テストステロンの多さがリスク要因となるガンになりやすいのだと思います」
テストステロンは、膀胱・腎臓・肝臓・肺・膵臓などのガンのリスク要因だと考えられています。
「一方、スキを用いなかった社会の末裔が人口の大部分を占める国では、テストステロンの多い男性が社会的に有利となる状況が無かったために、癌リスクに関する性差が比較的小さいのではないでしょうか」