空腹感にアルツハイマー病予防の効果?

(2013年4月) 食事量を減らすカロリー制限がアルツハイマー病などの神経変性疾患の予防に有効であることが示唆する研究は多数存在しますが、アラバマ大学の研究によると、空腹感を感じることがアルツハイマー病の予防に有効かもしれません。 空腹感と関わりのあるホルモン経路が、実際に食事量を減らすのと同様に有効かもしれないというのです。

研究グループは、空腹感が軽いストレスとなって、脳のプラーク(アルツハイマー病の原因)の蓄積を抑える代謝信号経路を発火させるのではないかと仮説を立てました。 この仮説は、有害なもの(ここではストレス)でも微量であれば有益だとするホルミシス理論に基づくものです。

空腹感にはグレリンというホルモンが関わっているので、この研究では合成グレリンをマウスに経口投与するという実験を行いました。

実験の方法

実験では、遺伝子改造によりアルツハイマー病の発症リスクを増加させたマウスを用いて、実際のカロリー制限を行うことなく、空腹感だけでアルツハイマー病のリスクを減少できるかどうかを調べました。

遺伝子改造マウスを次の3つのグループに分けました: ①合成グレリン(グレリン作用薬 "LY444711")を投与されるグループ、②カロリーを20%制限されたグループ、③普通にエサを与えられたグループ。 そして、これら3グループで、記憶力、アルツハイマー病の病変の度合い、アルツハイマー病への関与が疑われる免疫細胞(小膠細胞)の活性を計測しました。

結果
実験の結果は次の通りです。
  1. 水の迷路を利用した記憶力のテストでは、①と②のグループが有意に良い成績を収めました。 ③のグループに比べて、①のグループが26%、②のグループが23%良い成績でした。
  2. アルツハイマー病の病変の度合いの検査で、前脳部におけるアミロイドβの蓄積具合を測定したところ、③のグループに比べて、①と②のグループでは、歯状回(記憶を司る脳の領域)におけるアミロイドβの蓄積が有意に少ない(③に比べて、①で48%減、②で67%減)ことが明らかになりました。
  3. 小膠細胞は、脳の免疫細胞であり、侵入してくる病原体や死滅した組織を飲み込み、取り除くという役割を持っていますが、誤って活性化した場合には健康な組織を傷つけてしまいます。 ①のグループでも②のグループと同様に、この小膠細胞の活性が③のグループよりも減少していました。
なお、実験に用いられたグレリン作用薬は、ヒト向けの医薬品としては使用されておらず、将来的にも製品化されることはありません。