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大気汚染物質(PAH)に暴露した胎児では脳の発達が損なわれる

(2015年3月) "JAMA Psychiatry" に掲載予定である Children’s Hospital Los Angeles およびコロンビア大学(いずれも米国)による研究で、妊娠中に多環芳香族炭化水素(PAH)に暴露した女性から生まれた子供は脳の領域のうち行動の制御や情報処理に関与する部分に異常が見られることが多いという結果になっています。 (出典: Prenatal Exposure to Common Air Pollutants Linked to Cognitive and Behavioral Impairment
多環芳香族炭化水素(PAH)

PAHは有害な大気汚染物質であり、ディーゼルエンジンの排気ガスや、化石燃料を用いる火力発電所や暖房器具の排ガス、焚き火の煙、タバコの副流煙、肉を焼いたときの煙、焼け焦げた食品などに含まれています。 発ガン性があります。

PAHは胎盤を容易に通過して胎児の脳に影響します。 予備的な動物研究では胎児のときにPAHに暴露することによって行動・学習・記憶の発達に支障が生じることが示されています。
今回と同じコホート(集団)を調査した過去の研究では、大気中に霧散するPAHに妊娠中に暴露することによって3才までのうちにに発達の遅れが生じ、5才までのうちに言語に関するIQの低下が見られ、7才の時点で不安感と抑鬱のリスクが増加するという結果になっています。
妊娠中に大気汚染物質(PAH)に暴露すると、生まれる子供の ADHD リスクが増加」という研究も今回と同じコホートだと思います。
研究の方法

今回の研究では、600組の母子の中からニューヨーク市に住むマイノリティー(白人以外の人種)40組を選出してMRI(磁気共鳴画像法)を用いて脳の構造を調べ、妊娠27週目以降におけるPAHへの暴露が胎児の脳に及ぼす影響を調査しました。

結果

(胎児のときにPAHに暴露した子供では)脳の左半球のほぼ全域にわたって白質の減少が見られました。 このような白質の減少は、知能テストにおける情報処理速度の低下や、注意欠陥・多動性障害(ADHD)あるいは攻撃性などの重度の行動障害に関与している可能性があります。

出生後(5才のとき)にさらにPAHに暴露した子供では、前頭前野背部の白質の発達にも追加的な異常が生じていました。 この部分の白質は、集中力・思考能力・判断力・問題解決能力に関与しています。

補足情報

今回確認された脳の異常がADHDの子供に一般的に見られる脳の異常とは違っていたことから、PAHにより引き起こされるのは特殊なタイプのADHDである可能性があります。

今回の研究で対象となった40組の母子は貧困で教育水準も低い世帯だったため、今回の結果は世間全般には適用できないかもしれません。 研究チームは今後、もっと大規模な研究で今回の結果を確認する予定です。