自前の歯が少ないと記憶力が衰える

(2013年8月) "European Journal of Oral Sciences" に掲載された研究で、入れ歯ではない自分の歯が少ないほど記憶力が悪くなることが示唆されています。

この研究では、55歳以上の人たち273人を対象に、入れ歯ではない自前の歯が残っている本数と、記憶力テストの成績との関係を調べました。

その結果、自前の歯の残り本数が少ない人ほど、記憶力テストの成績が悪かったのです。 対象となった273人の自前の歯の残り本数は平均22本でした。 この本数は、全部の歯の1/3ほどにあたります。

歯の残り本数が少ないと記憶力が衰える理由
入れ歯ではない自前の歯の残り本数が少ない人で記憶力が衰える理由は明らかではありませんが、研究グループは、次のような理由を仮説として挙げています。
  • 自分の歯を失うことで、歯から脳に送られる感覚信号が減少し、そのために脳の機能(記憶力など)に悪影響がある可能性があります。

    入れ歯ではない自分の歯は、顔の感覚や咀嚼などの動作を司る神経を経由して脳に信号を送ります。 人工の歯は、食事をする際には役立ちますが、本来の自分の歯を顎と結びつけている神経と歯根膜(ligament)がありません。 そのため、歯を通して脳へ入力される感覚情報の量が減少している可能性があります。
  • 自分本来の歯の喪失と記憶力の減衰の両方に共通する要因が存在している可能性もあります。 例えば、歯周病では、歯が抜け落ちるのと同時に、(歯周病に起因する)炎症が神経細胞の死滅と記憶力の低下の原因となるケースがあると考えられます。

    加齢も歯周病と同様に歯の喪失と記憶力の減衰の両方に共通する要因ですが、今回の研究で示された歯の残り本数と記憶力との関係は、年齢(他にも、教育水準や職種、病歴なども)を考慮したのちにも有効でした。 つまり、加齢が原因で記憶力が衰え、歯の本数が減るというのではないというわけです。
  • 他には、自前の歯の本数が少ないために特定の食品を食べておらず、その中に記憶力の維持にとって有益なものが含まれているという可能性もあります。
他の研究でも同様の結果に

今回の研究の欠点は、対象者数が273人と少数であるという点です。 ただし、4,000人以上を対象とした研究が 2011年に行われており("Behavioral and Brain Functions" 誌に掲載)、こちらの研究でも、自前の歯の残り本数の少なさが高齢者の記憶障害のリスク要因となることが示唆されています。

また、ネズミの歯を抜くという非人道的な動物実験でも、歯を抜かれた可哀想なネズミにおいて記憶力と学習力に障害が生じ、抜かれた歯の本数が多いほど、脳の神経細胞の損失量が多く、海馬(記憶に関与している脳の領域)の損傷が大きいという結果になっています。