カロリー制限で増加するホルモンFGF21に免疫機能を維持する効果も?

(2016年1月) "Proceedings of the National Academy of Sciences" に掲載されたイェール大学の研究により、FGF21というホルモンが胸腺のストローマ細胞によっても作られていること、そしてFGF21の量を増やすことで老化による免疫機能の衰えを防げることが明らかになりました。出典: Life-Extending Hormone Bolsters the Body's Immune Function

予備知識
FGF21

FGF21は主に肝臓(*)で作られるホルモンで、代謝に関与しています。 インスリン感受性を改善したり体重減少を引き起こしたりする作用があることから、2型糖尿病や肥満の治療への利用が期待されています。過去のマウス実験では、FGF21に寿命を40%延ばす効果のあることが示されています。

(*) Wikipedia によると、肝臓のほか褐色脂肪・白色脂肪・膵臓など様々な組織で作られますが、マウス実験では血中に存在するFGF21は肝臓に由来することが示されています。

カロリーの摂取量を減らすことによってグルコース(ブドウ糖)の体内量を低い水準に抑え脂肪を燃焼させると、FGF21の量が増加します。 「寒さに10分間震えるだけでカロリーを燃焼しやすい体質に」によると、寒さによって褐色脂肪から放出されるFGF21の量が増加します。 FGF21は母乳にも含まれています。

胸腺

胸腺には免疫細胞の一種であるT細胞を新しく作るという機能がありますが、加齢とともに脂肪が溜まって新しいT細胞を作る能力が失われてゆきます。 T細胞の生産量が低下すると、感染症や一部のガンのリスクが増加します。

研究の方法

遺伝子改造により高齢マウスのFGF21の量を増やしたり欠乏させたりして、FGF21が免疫系に及ぼす影響を調べました。

結果
FGF21の量を増やすと胸腺の脂肪変性(*)が阻止されて胸腺がT細胞を作り出す能力が改善されましたが、FGF21を欠乏させると胸腺の脂肪変性が促進されました。
(*) 細胞質内に脂肪滴が出現している状態。脂肪化とも呼ばれる。 脂肪滴とは細胞中に存在する球形の液滴のことで、内容物は脂質やタンパク質など。 脂肪滴それ自体は異常なものではなく、脂肪細胞には大量に存在する。
コメント
研究者は次のように述べています:

「胸腺上皮細胞には肝臓の数倍の量のFGF21が存在していました。 したがってFGF21は胸腺の内部においてT細胞の生産を促進しています」

「高齢者や骨髄移植を受けたガン患者では、FGF21の量を増やすのがT細胞の生産量を増加させて免疫機能を強化するのに有効かもしれません」