「わたし」の多用はネガティブな精神状態のシグナル

(2018年3月) 過去の研究で、一人称単数形(わたし・俺・ボクなど)の多用が抑鬱の兆候であることが示されていますが、"Journal of Personality and Social Psychology" に掲載されたアリゾナ大学の研究によると、一人称単数形の多用は抑鬱だけでなくネガティブな精神状態(抑鬱・不安・心配・緊張・怒りなど)全般を感じやすい傾向にあるかもしれません。

研究の方法

米国とドイツに住む男女 4,754人に何かを話をしたり何かを書いたりしてもらい、そこに一人称単数形がどれだけ頻繁に出てくるかを調べました。 さらに、抑鬱などネガティブな精神状態の程度も調べて、一人称単数形とネガティブな精神状態との関係を分析しました。

結果

男性でも女性でも一人称単数形を頻繁に使用する人は、精神状態が抑鬱に限らずネガティブであることが多いという結果でした。

一人称単数形の多用はネガティブな精神状態のシグナルとして、「悲しい・不幸だ・憎む・嫌い」などのネガティブな言葉よりも強力でした。

平均的な人は1日のうちに1万6千語を発話し、そのうちの 1,400語ほどが一人称単数形ですが、これが 2,000語を超えてくると精神状態がネガティブに陥りやすいかもしれません。

「私の」はセーフ

一人称単数形の多用とネガティブな精神状態との関係は、一人称単数形を主格(私は、私が)や目的格(私を、私に)として用いる場合にのみ見られ、所有格(私の)として用いる場合には見られませんでした。

主格や目的格の一人称と違って所有格の一人称は「私自身」を話題にするのでない(例. 私の息子・私の上司・私の部下・私の配下・わが精鋭部隊・私の隠し金庫)ことが多いためかもしれません。

文脈による違い

一人称単数形の多用とネガティブな精神状態との関係が見られたのは、個人的な事柄(恋人との出会いと別れなど)に関する文脈においてのみでした。 個人的でない事柄に関する文脈では、このような関係は見られませんでした。

関連研究

"Journal of Research in Personality"(2013年)に掲載されたカッセル大学(ドイツ)の研究では、鬱病または不安障害で治療中の女性103人と男性15人を調査して、「わたし」という一人称の単数形を多用する人は「わたしたち」という一人称複数形を多用する人に比べて抑鬱や不安の症状が強い傾向にあるという結果になっています。

この結果になった理由として次の2つの可能性が考えられます:
  • 「わたし」を多用する人は他人の注目を要求するタイプで寂しがり屋だから。
  • 「わたし」という一人称になってしまうのは孤独だから。(孤独は欝のリスク要因です)