軽く体を動かすと頭の働きが良くなる

(2018年1月) "The Journal of Primary Prevention" に掲載されたミシシッピー大学の研究で、5分間のウォーキングにより若者の認知機能が向上するという結果になりました。 入学試験や学校の定期テストなどの前には軽く体を動かすと良いかもしれません。

研究の方法

44人の若者を2つのグループに分けて(*)、一方のグループにのみウォーキング・マシンで5分間のウォーキングを行ってもらいました。 ウォーキングのペースは各人の好みに任せました。

そして、運動(または何もしない)の前後にトレイル・メイキング・テストB(後述)と呼ばれる認知機能テストを実施して、運動をする場合としない場合とでテストの成績を比較しました。

(*) 厳密に言えば、今回の試験ではソロモン4群法と呼ばれる研究手法を用いたので、グループの数は4つで、被験者数は各グループ22人ずつで合計88人。

4つのグループというのは次の4つ: ①認知機能テスト→運動→認知機能テスト、②認知機能テスト→何もせず→認知機能テスト、③運動→認知機能テスト、④何もせず→認知機能テスト。

③と④のグループは、①と②のグループで認知機能テストを2回繰り返すのが試験結果に影響を及ぼしていないかどうかをチェックするために用いられる。 本文中の「2つのグループ」というのは①と②のグループ。

結果

運動をしなかったグループでは、2回の認知機能テストの成績に違いがありませんでした(テスト完了に要した時間が42.8秒と40.6秒)。

一方、運動をしたグループでは、運動前の認知機能テストでは完了までに56.3秒を要したのに対して、運動後の認知機能テストでは35.7秒しか要しませんでした。 この結果は統計学的にも有意でした。

トレイル・メイキング・テストについて

トレイル・メイキング・テスト(TMT)は、紙面にランダムな位置に記載された数字を、数字の小さいほうから大きいほうへと鉛筆の線でつないでいくというテストです。 完了までの所要時間が短いほど優秀です。

TMTにはTMT-AとTMT-Bがあり、TMT-Aは数字だけですがTMT-Bでは数字とアルファベット(日本語版では平仮名)が混在していて、「1→A→2→B→3→C...」という順序で線をつないでゆきます。

TMTについては、「作業療法プレス」という作業療法士の方が運営しているサイトで図解入りでわかりやすく説明されています。

TMTの結果に反映されるのは、Wikipedia によれば視覚的探索速度・スキャン速度・処理速度・実行機能などです。 「作業療法プレス」によると、TMT-Bの成績にはワーキング・メモリーの程度も反映されます。

実行機能

実行機能とは、計画立案能力・判断力・思考力・問題解決能力・感情抑制力などです。 注意力や記憶力も実行機能に含まれることがあります。

ワーキング・メモリー

ワーキング・メモリーとは、視覚的または言語的な情報を一時的に記憶し、その情報を用いて作業する能力のことです。 ワーキング・メモリーは集中力や注意力と密接な関係にあります。 ワーキング・メモリーはわずか数秒間という短い時間単位で作用します。

ワーキング・メモリーは例えば、暗算をしたり物語を聞いて理解するのに必要です。 暗算の対象となる数字を一時的に記憶したり、物語の出来事の流れを記憶するのにワーキングメモリーが必要とされるためです。

ワーキング・メモリーは集中力・注意力・判断力・問題解決能力・学習能力にとって重要であり、ワーキング・メモリーが不足すると勉強や仕事に支障が生じます。 "Frontiers in Psychology" 誌に掲載された研究によると、学校の成績に大事なのはIQよりもワーキング・メモリーです。