食物アレルギーを抑制するには食物繊維(と腸内細菌)とビタミンA

(2016年6月) "Cell Reports" 誌に掲載されたモナシュ大学(オーストラリア)の研究によると、食物繊維が腸内細菌を介して、ピーナッツ・アレルギーなどの食物アレルギーを発症するリスクに影響している可能性があります。

過去数10年間でアレルギー性疾患の患者が増えている理由として「環境が清潔になり過ぎて免疫力が弱ったせいではないか」と考えられたりもしていますが、今回の研究によると、食物アレルギー罹患率増加の原因は食生活の変化にあるのかもしれません。

実験①

ピーナッツ・アレルギーを人為的に引き起こしたマウスの一群を2つのグループに分けて、一方のグループにのみ食物繊維を豊富に含むエサを与えて健全な腸内細菌叢(腸内環境)を実現したところ、普通のエサを与えられたグループに比べて、ピーナッツ・アレルギーの症状が軽微でした。

実験②
方法
次に、食物繊維を豊富に含むエサを与えられていたグループから採取した健全な腸内細菌群を、無菌状態で飼育され腸内細菌を持っていないマウスの一群(*)に移植しました。
(*) 察するに、このマウスの一群もピーナッツ・アレルギーを人為的に引き起こされていて、エサは普通のエサ(食物繊維が多くない)だったのでしょう。
結果

無菌だったマウス自身は食物繊維を摂っていなかったにも関わらず、ピーナッツを与えられたときのアレルギー反応が軽微でした。 食物繊維を多く含むエサの成果である健全な腸内細菌叢を移植されたことによって、アレルギーに対抗できる体質になったというわけです。

解説
腸内細菌が食物繊維を分解するときには酢酸塩や酪酸などの短鎖脂肪酸(SCFA)が生じますが、このSCFAが免疫系に作用してアレルギー反応を緩和します。 具体的には、SCFAが制御性T細胞(*)に備わる特定の受容体と結合することによって、腸の炎症(†)を制御する一連の反応が促進されます。

(*) 免疫反応を抑制する作用を持つ。

(†) 食物アレルギーが生じている最中には、腸に過剰な炎症が生じることがあります。
実験③

さらに、食物繊維でもなく腸内細菌でもなくSCFAを直接マウスに投与しても、抗炎症効果が得られました。 ピーナッツ・アレルギーが生じているマウスの一群に、ピーナッツを与える前にSCFAを含有する水を3週間にわたり与えたところ、健全な腸内細菌が不在の状態でもアレルギーの症状が緩和されていました。

ビタミンAも重要

プレスリリースのベースとなった論文のアブストラクトによると、食物アレルギーの抑制にはビタミンAも大切であるようです。

アブストラクトによると、抗原(*)への耐性は腸の粘膜に存在するCD103という樹状細胞(†)に依存していますが、食物繊維を多く含むエサによるアレルギー耐性の向上は、このCD103においてレチナール・デヒドロゲナーゼ(‡)の活性が増大することにより達成されます。

(*) アレルゲン(アレルギー原因物質)も抗原の一種。

(†) 免疫細胞の一種で、制御性T細胞の分化(成熟)を促進する。

(‡) レチノール(ビタミンA)を代謝する酵素。
したがって、食物アレルギーの抑制には食事中に含まれるビタミンAも大切です。 アブストラクトでは次のように結論付けられています:
「食物繊維やビタミンAなどの栄養素は、胃腸管において食品に含まれるアレルゲンに免疫系が無反応であるために必要とされる様々な保護メカニズムを調節している」

論文本体を見ると、ビタミンAがなくても食物繊維によって腸内細菌叢が健全になりSCFAが作られ、制御性T細胞の数も増えますが、ビタミンAが十分な場合に比べて制御性T細胞が不完全であると思われます。

食物繊維を十分に摂っているグループ同士の比較でも、ビタミンAが不足しているグループの方がアナフィラキシー(複数のアレルギー症状が全身に生じる)が重度でした。