食事量を減らすだけで多発性嚢胞腎の進行が鈍化する?

(2016年1月) "Renal Physiology" 誌に掲載されたカリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究(マウス実験)で、食事量を減らすだけで常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の進行が劇的に鈍化するという結果になりました。 Mayo Clinic(米国)が別途に行ったマウス実験でも同じ結果となっています。出典: Small Reduction in Food Intake May Be Enough to Slow Polycystic Kidney Disease

ADPKDとその治療法

ADPKDは遺伝性の腎臓疾患で、米国における患者数は40万人ほどです。 ADPKD患者の半数ほどが腎不全になります。 米国では認可済みのADPKD治療薬は存在しませんが、日本・欧州・カナダではトルバプタンという治療薬が認可済みです。 しかしながら、トルバプタンは非常に高価であるうえ副作用の問題があります。 ADPKDはゆっくりと進行していく慢性疾患なので、治療薬の副作用が少ないことが大切です。

研究の背景

研究チームは、ラパマイシンというPKD治療薬として研究されている薬の作用ターゲットであるmTORと呼ばれ細胞の成長と分裂の調節に深く関与する経路に注目していました。 mTOR経路が栄養が豊富に存在すると活性化することから研究チームは、栄養の供給を制限することでmTOR経路の活性に変化が生じるのではないかと考えました。

実験の方法

多発性嚢胞腎(PKD)のマウスを2つのグループに分けて50日間ほどにわたり、一方のグループ(コントロール・グループ)にはエサを食べたいだけ食べさせ、もう一方のグループではエサの量をコントロール・グループよりも23%減らしました。

結果

コントロール・グループでは腎臓の重量が2.5倍に増えていたのに対して、エサを減らしたグループでは1.4倍に増えただけでした。 エサを減らすことによるPKDへの効果は、ラパマイシンを投与した場合に匹敵します。 そしてラパマイシンと違って、食事量を減らすだけなので副作用がありません。

エサを減らしたグループでは腎機能が維持され、末期の腎疾患へと進行しませんでした。 さらに、研究チームが当初に考えた通りに、mTOR経路が阻害されていました。

今後の予定
現時点では、エサの量を減らしてPKDの進行が抑制されるのが摂取カロリーが減るからなのか、それとも炭水化物や、脂質、タンパク質など特定の栄養素の摂取量が減るからなのかは不明です。 ヒトを対象とする試験が行われるのは、その点が明らかになってPKD用の効率的な食事制限法が考案されてからとなります。