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虚弱の予防には抗酸化能力とタンパク質を兼備する食生活が良い

(2017年5月) "Nutrition Journal" に掲載された東京大学の研究によると、高齢者の虚弱を予防するには、抗酸化能力が高い食生活とタンパク質を多く摂る食生活を組み合わせた食生活が良いかもしれません。

これまでの研究でも、タンパク質を多く摂る食生活と抗酸化物質を多く摂る食生活がそれぞれに虚弱の予防に有効であることが示されてきましたが、今回の研究ではタンパク質と抗酸化物質の両方を多く摂る食生活に虚弱を予防する強力な効果を期待できることが示されました。
虚弱とは
虚弱とは、不本意な体重の減少・疲労感・活動量の低下・動作の鈍化・筋力低下などが見られる状態を指します。 虚弱な高齢者では入院や死亡のリスクが増加します。

研究の方法

クロスセクショナル研究において、日本各地(北海道~九州)に住む65才以上(中央値は74才)の女性 2,108人を対象に食生活に関するアンケート調査を実施して、タンパク質の摂取量と食生活全体の抗酸化能力(TAC(*)を割り出しました。
(*) 普段の生活で飲食している各食品に備わる抗酸化能力のトータル。 今回の研究ではORAC(酸素ラジカル吸収能)と呼ばれる抗酸化能力の目安を用いた。 食品ごとのORACが既に明らかになっているので、そのORACの数値と今回の研究で調べた食品ごとの摂取量から食生活全体の抗酸化能力を算出した。

そして、タンパク質の摂取量やTACに応じてデータを3つのグループに分けて、虚弱のリスクに影響する様々な要因を考慮しつつ虚弱のリスクを比較しました。

結果

タンパク質摂取量が最大のグループは最低のグループに比べて、虚弱のリスクが34%低くなっていました(*)。 TACが最大のグループは最低のグループに比べて、虚弱のリスクが49%低くなっていました。
(*) 動物性タンパク質と植物性タンパク質に分けて分析すると、動物性タンパク質についてのみ摂取量が多いと虚弱のリスクが下がっていました。 しかし、植物性タンパク質を含む豆類などの食品にはTACの向上が期待できます。

さらに、タンパク質摂取量とTACの両方において最大のグループは両方において最低のグループに比べて、虚弱のリスクが73%低くなっていました。

解説

虚弱が起こるメカニズムは完全には解明されていませんが、筋肉の減少が虚弱の原因の1つであるとは思われます。

タンパク質

筋肉の量と機能を維持するには、タンパク質を食事で十分に摂ることが大切だと思われます。 これまでに複数の研究で、タンパク質の摂取量が少ないと虚弱のリスクが増加することが示されています。

抗酸化能力

炎症と酸化ストレスにより筋タンパク質の合成量が減ったり、筋タンパク質の分解が促進されることが知られています。 抗酸化能力が高い食生活により虚弱のリスクが低下するのは、食事に備わる抗酸化能力によって炎症と酸化ストレスが軽減されるためかもしれません。

TACを上げるには

今回の研究チームの過去の研究では、緑茶・コーヒー・野菜・果物といった食品がTACの向上に寄与すること、そしてこうした食品の摂取量が多いと虚弱になりにくいことが示されています。

米国農務省が以前に公開していたORACのリストでは、プルーン・小豆・ブルーベリー・苺・ピーカンナッツなどがORAC的に優秀な食品であるとされていました。

関連研究

"American Journal of Clinical Nutrition"(2016年)に掲載された追跡研究に、野菜や果物をよく食べる高齢者は2.5年間のうちに虚弱になるリスクが30~70%ほど低いという結果になったものがあります。

さらに、"European Journal of Nutrition"(2017年)に掲載された滋賀県立大学などの研究では、食生活が酸性に傾いている高齢の女性は虚弱のリスクが1.5倍以上に増加するという結果になっています。

野菜や果物を食べていると食生活がアルカリ性に傾くので、食生活のTACという点からも酸性度という点からも、果物野菜を積極的に食べるようにすると虚弱の予防に役立つかもしれません。

ORACは使えない指標?

米国農務省は以前、食品ごとのORACを示したリストを公表していましたが、2012年にリストを非公開としました。 その理由は「ORACは生体外で測定したものであり、各食品が人体の中でORAC値が示す通りの抗酸化効果を発揮するという確証が持てない」というものです。

今回の研究チームは、ORACを使用した理由として「以前の研究で、他のTACの指標に比べてORACが最も虚弱との関係性が強く見られたため」であると述べています。