細胞のフリーラジカルへの耐性は老化によっても失われない?

(2015年7月) フリーラジカルはこれまでタンパク質にダメージを与えてその機能を損ない老化の原因になると考えられてきましたが、"Cell Reports" 誌に掲載された英国の研究により年を取ってもフリーラジカルによるタンパク質への影響に変化が無いことが示されました。出典: Free Radicals May Not Be So Destructive After All

フリーラジカルについて

老化の背後にフリーラジカルの蓄積が存在するという説は 1950年代に唱えられ始めました。

フリーラジカルがダメージを引き起こすのは、フリーラジカルが抱え込んでいるエネルギーが過剰あるいは過少であるためです。 フリーラジカルは人体の細胞中にあってタンパク質などの分子からエネルギーを奪ったり、分子にエネルギーを押し付けることにより自らのエネルギーのバランスを保とうとします。

このエネルギーの移動は電子の移動により行われます。 そして、タンパク質を奪われた電子は「酸化」してしまって正常に機能しなくなる可能性があります。 これまで次のように考えられていました:
「若いうちは細胞はフリーラジカルが引き起こすダメージを修復できるが、年を取るにつれてフリーラジカルの増加に細胞が対応できなくなってゆく」
年を取ってもタンパク質の酸化状態は変わらない

今回の研究では若年~老年のショウジョウバエを用いた実験により、数百種類のタンパク質のうち加齢に伴って酸化が進むものを特定しようとしました。

ショウジョウバエは多数の遺伝子がヒトと共通しているうえに、老化の仕方もヒトに似ていると考えられています。 そして、世代交代のペースが速いために研究が容易です。
驚いたことに、若年でも老年でもタンパク質群の酸化の状態は同じでした。 このことから、細胞に(フリーラジカルから)身を守るシステムが備わっていると思われます。
「酸化の状態が同じ」というのはフリーラジカルで細胞が酸化しないというわけではなく、若年でも老年でも酸化の程度が変わらないということでしょう。

今回の結果により「老化の原因が全面的にフリーラジカルにあるわけではない」という主張が重みを増します。 研究者は「老化のメカニズムを基本的なところから考え直す必要がある」と述べています。

カロリー制限 ⇒ タンパク質の酸化 ⇒ 健康と長寿?

摂取カロリーを大幅に制限することによって健康が改善し寿命が延びることが何種類もの動物で確認されていますが、研究の一環として普通のショウジョウバエと飢餓状態にあるショウジョウバエとでタンパク質の酸化状態を比較したところ、飢餓状態のショウジョウバエでは(フリーラジカルにより)酸化したタンパク質の量が増えて、他(のタンパク質)の電子の増減を引き起こしていました。

タンパク質の酸化は飢餓などの環境的なストレスの存在を細胞に伝える役割も果たすことがあります。

研究者は次のように述べています:
「今回の結果をさらに調査することで、老化プロセスの研究の焦点は今後フリーラジカルからタンパク質の酸化へと移っていき、食事と寿命の関係についての解明も進むでしょう」