一流のアスリートに多く見られる遺伝子変異体

(2013年9月) "Journal of Strength and Conditioning Research" に掲載されたポーランドの研究によると、オリンピックに出場するようなエリート・アスリート(運動選手)は、凡人よりも遺伝子が優秀である可能性があります。

研究の方法

この研究では、①重量挙げ、短距離走、および高跳びという筋力を要求される競技の選手100人のグループ、②長距離走や水泳、ボートなど持久力を要求される競技の選手123人のグループ 、そして③運動選手ではない(通常人の)344人のグループの DNA サンプルを比較しました。

運動選手のグループはいずれも、世界レベルや欧州レベルの大会、ワールドカップ、オリンピックなどの国際大会で活躍するエリート選手でした。

結果

DNA を比較した結果、①のグループ(筋力を要求される競技のエリート選手のグループ)では、アンジオテンシノーゲン(AGT)遺伝子における特定の変異体(M235T という多形)が、②および③のグループの2~3倍の頻度で生じていることが明らかになりました。 ②のグループでは13%、③の一般人のグループでは19%がこの多形を有していたのに対して、①のグループでは40%がこれを有していました。

「多形」というのは、遺伝子変異体のうち、人口の1%以上の頻度で存在し、病的影響をもたらさないものを指すようです。 今回の M235T という多形では、AGT 遺伝子内部のアミノ酸の順番において235番目に位置するメチオニン(Methionine)というアミノ酸が、スレオニン(Threonine)というアミノ酸に入れ替わっています。 「M235T」はたぶん、235番目の位置において M が T に入れ替わったという意味でしょう。

過去の研究には、パワースポーツの優秀な選手には AGT 遺伝子に T704C という多形を持つ人が多いことを示したものもありますが、この「T704C」というのも、AGT 遺伝子の 704番目のアミノ酸が、スレオニンからシトシン(Cytosine)に入れ替わっているという意味だと思います。

さらに、パワースポーツの優秀な選手では AGT の変異(M235T のことでしょう)が2つ存在する傾向が高いことも明らかになりました。 これは、両親が共に(M235T という)同一の変異体を持っていて、その両方が子供に受け継がれたということです。

AGT 遺伝子は、血圧・体内の塩分・水分バランスの調整に関与している遺伝子ですが、研究グループは、この遺伝子によって筋力も強くなるのではないかと考えています。

コメント
研究者は次のように述べています:
「パワースポーツ(筋力を要求されるスポーツ)への適正を評価する際には、この多形(M235T)が AGT で生じているかどうかも評価項目の1つとなるでしょう」