地磁気嵐は、太陽風やコロナ質量放出(太陽活動に伴って太陽から惑星間空間内へ突発的にプラズマの塊が放出される現象)によって太陽から強力な磁場が放出され、地球の磁場がかき乱されるために生じます。
地磁気とは地球が持つ磁気のことで、コンパスの針が北を指すのも地磁気のお陰です。 したがって地磁気嵐が生じるというのは、コンパスが狂うような現象だということです。
地磁気嵐の継続時間は数時間~数日間で、場合によっては衛星を狂わせたり、送電網に干渉して停電の原因となるほどに強力な嵐となることがあります(ただしカナダなど高緯度の国だけ)。この研究では、初回の脳卒中が起きた件数と地磁気活動とを照らし合わせました。 脳卒中患者のデータは、欧州、オーストラリア、およびニュージーランドで1981~2004年にかけて行われた複数の研究のもの(患者数合計1万1千人超)を用いました。 地磁気活動のデータは、米国海洋大気局(NOAA)から入手しました。
脳卒中1件ごとに、脳卒中が起きた当日の地磁気活動と脳卒中が起きなかった8日間の地磁気活動とを比較した結果、地磁気嵐が起こった日には脳卒中のリスクが19%増加していました。
この19%という数字はそこそこに有意な数字で、ホルモン補充療法を受けることで増加する脳卒中のリスクと同程度ですが、喫煙や高血圧によるリスク増加幅ほどではありません。
今回のデータにおいて脳卒中になったのは70才前後の人が多かったのですが、地磁気嵐による脳卒中リスクの増加は65才未満の人で顕著でした。
地磁気嵐によって脳卒中が増加する理由は不明ですが、これまでの研究で地磁気嵐が人体に血圧増加や、心臓リズムの変動、血液凝固能(血栓のリスク)などの影響を与えることが示されており、これらはいずれも脳卒中のリスク要因です。
研究チームは、脳卒中のリスクが高い人は地磁気嵐のときには過度の飲酒を避ける、脱水症状にならないように気をつけるなど慎重に行動することを提案しています。
地磁気は気象庁地磁気観測所のサイトでチェックできます。 今年(2014年)は太陽極大期(太陽活動が最高となる年)に当たります。