歯周病菌は炎症を促進することによって自分たちのエサを作り出す

(2014年6月) "Cell Host & Microbe" 誌に、歯周病が開始されるメカニズムに関するペンシルバニア大学研究が掲載されています。

この研究によると、Porphyromonas gingivalis(歯周病原性細菌)という歯周病菌が、免疫細胞の炎症を引き起こす能力を促進しつつ免疫細胞の殺菌能力だけを遮断するために、「細菌共生バランス失調(dysbiosis)」と呼ばれる細菌バランスの崩壊が生じて歯周病になります。

具体的には、次の2つのプロセスが悪循環して歯周病が悪化してゆきます:

  • 免疫細胞の殺菌能力が P. gingivalis によって遮断されるために、日和見的な(人体が健康な状態であれば害は為さない)歯周病菌が免疫系による細菌排除機能を免れる。 これにより、細菌共生バランス失調が促進され(悪玉化した日和見歯周病菌によって)炎症と骨の喪失が生じる。

  • その一方で、免疫細胞による炎症作用は P. gingivalis によって促進されるために、炎症により生じる分解物がバランス失調を起こした細菌叢(たぶん P. gingivalis と日和見歯周病菌を指す)のエサになり、細菌共生バランス失調がさらに促進される。
P. gingivalis は口内に存在する細菌としては比較的少数だと思われますが、その能力ゆえに歯周病の原因となっているのだと考えられます。 ただし研究チームによると、P. gingivalis だけでは歯周病は成立せず、P. gingivalis は歯周病のきっかけとなっているだけです。

過敏性腸疾患や結腸ガンなどの炎症性疾患においても、P. gingivalis のように病気の引き金となる病原菌が存在するのではないかと考えられ始めています。

詳細
今回の研究によると、P. gingivalis は免疫細胞の一種である好中球に存在する C5aR と TLR2(Toll-like receptor-2)という2つの受容体に干渉(両者を物理的に一体化させる)して次の2つを行います:

  • 病原菌の排除に関与する MyD88 というタンパク質を劣化させる。

  • PI3K という酵素を活性化させて炎症を促進し、同時に、好中球の貪食能力(人体に侵入してきた細菌を食べる能力)を阻害する。
今回の研究で行われた実験の結果は次の通りです:

  • P. gingivalis を接種するというマウス実験において、C5aR または TLR2 を持たない個体や、これらの受容体を遮断した個体では、通常の個体に比べて細菌の量が減っていた。

  • また、ヒトの好中球を用いた実験でも、C5aR または TLR2 を遮断することによって、免疫細胞が細菌を殺す能力が向上した。

  • PI3K または PI3K の上流において作用する Mal という分子の活性を阻害したところ、歯茎から P. gingivalis を排除するという好中球の能力が回復した。