遺伝子組み換え食品を食べても大丈夫?

2011~2012年に中国の南京大学が、遺伝子組み換え(GM)作物を食べたマウスにおいて、GM作物に含まれる遺伝子にマウス本来の遺伝子が駆逐されるという研究を発表しました。

この研究の結果、食べるだけで遺伝子治療が可能な食品への期待が高まる一方で、GM作物の危険性に対する不安も増加しました。

しかし、今回のジョンズ・ホプキンス大学の研究によると、南京大学の研究結果は誤りである可能性が少なくありません。 今回の研究によると、食品に由来する遺伝物質が消化器官による消化を逃れる可能性は、ほとんどありません。 そして、腸壁を通過して血流中に入り込む確率はさらに低いのです。

南京大学の研究では、マイクロRNAに注目していました。 マイクロRNAは化学的にDNAに似ていますが、DNAとは違って、遺伝子の発現への干渉を主な役割としています。 遺伝子の発現とは、遺伝子の設計図に基づいてタンパク質を作ることです。

マイクロRNA はこのように、どの遺伝子がどの程度用いられるかに影響するわけですから、GM作物のマイクロRNAが、それを食べた人の血流中に、そしてそこから体組織に入り込んで、入り込んだ先の体組織の遺伝子を調整するのだとすれば大変なことになります。

そこでジョンズ・ホプキンス大学の研究グループは、南京大学と同様の研究を自分たちでもやってみることにしました。 普通の食品店で購入した豆乳(GM作物を使用)に含まれるマイクロRNAの濃度を調べた後、サルにこの豆乳を与えたのです。 そして、サルの血液サンプルを採取しました。

GM作物に限らず植物のマイクロRNAは、その植物を食べた動物の血中にはごく微量にしか存在しないため、直接計測することはできません。 そこで研究グループは、血中の遺伝物質の量を測定するのに、南京大学の場合と同じくポリメラーゼ連鎖反応(PCR)という技術を用いました。 PCR では、血液サンプルに含まれる遺伝物質の破片のうちターゲットとするもののみをコピーすることができるのです。

分析の結果、ジョンズホプキンス大学の研究でも、南京大学の研究と同様に、GM作物のマイクロRNA と思われるものが、血液サンプル中に見つかりました。 しかし、同じ実験を数回繰り返してみたところ、結果がまちまちだったのです。 マイクロRNAが低濃度で存在することもあれば、まったく存在しないこともありました。

さらに、豆乳を飲ませる前にサルから採取した血液サンプルでも、豆乳を飲ませた後と同程度の確率でマイクロRNAが見つかりました。 これは、マイクロRNA の源が豆乳に含まれる植物であるならば考えられないことです。 (GM食品でなければ血流中にマイクロRNAが入り込むことはない?)

今回の研究グループの考えでは、血液サンプルから見つかったマイクロRNAはGM作物のものではなく、サル自身の遺伝物質です。 サル自身の遺伝物質の破片の中に、ターゲットとなる(GM作物の遺伝物質の)破片に良く似ているためにPCRによってコピーされたものがあったと考えれます。

(憶測ですが PCR では多分、ターゲットとなるGM作物の遺伝物質の完全な型を何らかの方法でPCRに記憶させるのでしょう。 そして、その型に適合する遺伝物質の破片を何とかしてサンプル血液の中から拾い出す。 今回の実験では、サル自身の遺伝物質の破片の中にたまたま、PCRが記憶している型に部分的に合致するものがあり、それがGM作物の遺伝物質として検出されたということでしょう。多分ですけど)

この考えを検証するため、ジョンズホプキンス大学の研究グループは、試験管ではなくエアロゾルの飛沫(液体粒子)の中でPCRを行うという新しい技術で、同様の実験を行ってみました。 この新技術では、数万回の(PCRの?)反応を同時に実行できる(つまり、実験を試験管で何万回分も行ったのと同じってことでしょうか)ため、各反応に一貫性があるか(実験の結果が有意なものか、偶然の産物であるか)どうかを確認することができるのです。 この新技術による実験の結果、GM作物のマイクロRNAがサルから採取したサンプル血液に含まれていなかったことが確認されました。

ただし、ジョンズホプキンス大学の研究者によると、極めて少量であれば GM作物のマイクロRNA が血流中に入り込む可能性は残っています。 しかし、仮にそうなったとしても、そのように数少ない分子が遺伝子の発現に影響することは考えにくいそうです。