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腸内細菌と肥満の関係においては食事内容も無視できない

(2013年9月) "Science" 誌に掲載されたワシントン大学の研究で、2つのグループの無菌マウスの一方には肥満の人から採取した腸内細菌を移植し、もう一方には痩せた人から採取した腸内細菌を移植するという実験を行ったところ、肥満者の腸内細菌を移植されたマウスのほうが体重増加量が多いという結果になりました。

これまでの研究では、腸内細菌の多様性が肥満に影響すること参考記事: 腸内細菌の多様性の乏しさが、肥満者の炎症の原因や、果物や野菜など繊維質の多い食品によって腸内細菌の多様性が増加することが示されていますが、今回の研究では、腸内フローラ(腸内細菌叢。 腸内に住む各種の細菌が織り成す生態系のようなもの)が太りやすい/痩せやすいという体質に影響することが直接的に示されました。

今回の研究ではさらに、①太りやすさ/痩せやすさに関与する腸内細菌の種類や、②それらの細菌の役割、③人体が摂取した食物とそれらの細菌との関わりも、部分的に明らかになりました。 (例えば、痩せた人の腸内から多く見つかった腸内細菌であるバクテロイデスには、特定の食事をしたマウスにおいて脂肪の蓄積を阻止する作用がありました)

ヒトの腸内細菌をマウスに移植

この研究では、片方が肥満で、もう片方が痩せているという兄弟あるいは双子から腸内細菌のサンプルを採取して、それを無菌マウス(無菌環境で育てられ、腸内細菌が存在しない)の腸に移植しました。

そうすると、肥満者の腸内細菌を移植されたマウス(Obマウス)が、普通のエサを与えているに関わらず、痩せた人の腸内細菌を移植されたマウス(Lnマウス)よりも太り始めたのです。(エサの量と内容は、どちらのマウスも同じだったのでしょう) ヒトの腸内細菌を移植されたことで、ヒトにおいて肥満の原因となる代謝的な変化がマウスでも起こっていたのです。

腸内細菌の交換

研究グループは次に、ObマウスとLnマウスを同じ場所で飼うようにしました。 その結果、食糞によって腸内細菌の交換が行われました。 つまり、ObマウスがLnマウスの出した糞を食べたり、その逆が行われることによって糞に含まれている腸内細菌が互いの体内に入り込み、腸内細菌の交換が行われたというわけです。

ObマウスとLnマウスを同じ場所で飼い始めてから10日後、Lnマウスのケージに入れたObマウスにLnマウスの代謝的な特徴が見られるようになりましたが、Obマウスのケージに入れたLnマウスには何の変化も見られませんでした。(LnマウスとObマウスは、移したほうも移されたほうも複数形ですが、数は不明。 移されたマウスのほうが少数というわけでもない?)

この結果から、(Obマウスの腸に入り込んだ)Lnマウスの腸内細菌が、Obマウスの腸内に元々存在していた細菌による脂肪蓄積を阻止したと考えられました。

特定

そこで研究グループは、複数のアルゴリズムを組み合わせて、Obマウスの体内で脂肪蓄積を阻止した細菌を特定しました。 その結果、バクテロイデス門の菌のうちの数種類が Obマウスの腸内に入り込み、それまで空いていたニッチ(生態的地位)に定住して、Obマウスに代謝の変化などの作用を引き起こしていたことが明らかになりました。 一方、Lnマウスの体内に入り込んだ Obマウスの腸内細菌はいずれも、Lnマウスの腸内に侵攻することが出来ませんでした。

「(ヒトでも同じような腸内細菌の交換があるはずなのに)どうしてヒトでは太った人が太ったままでいるのか?」と研究グループは疑問に思いました。

エサを変えて再度「腸内細菌の交換」の実験

現代世界において肥満者が肥満者のままでいる原因が食事にあるのではないかと考えた研究グループは次に、マウスを2つのグループに分けて、それぞれに異なるエサを与えることにしました。 1つは食物繊維が多くて飽和脂肪が少ないエサ(健全なエサ)、もう1つは逆に食物繊維が少なくて飽和脂肪が多いエサ(不健全なエサ)でした。 (エサは研究グループが調理したものを乾燥させてペレット状にし、殺菌しました)

そして、2種類のエサを用いて上記の「腸内細菌の交換」実験を(新しいObマウスとLnマウスを用いて)再び繰り返したところ、健全なエサでは前回と同じ結果でしたが、不健全なエサを与えた場合には、ObマウスがLnマウスの糞を食べてもObマウスの腸内にバクテロイデス菌が定着せず、BMI の増加が収まりませんでした。

今回の研究で解明されたのはここまでです。 代謝障害の根底にある食事と、BMI、腸内細菌の関係は、研究グループが当初考えていたよりも複雑でした。

今回の話ではバクテロイデスは肥満を退治してくれる菌のようですが、「禁煙開始直後には腸内細菌叢の特徴が肥満者と同じになる」によると、バクテロイデスは肥満者の腸内に多く存在する菌です。