腸内細菌が動物の気分や行動に影響を及ぼしている?

(2013年10月) "New York Academy of Sciences" のシンポジウムで発表されたカナダの研究によると、腸内細菌が動物の気分や行動に影響を与えている可能性があります。 この研究では、マウスを用いた実験を2つ行いました。

1つ目の実験

1つ目の実験では、腸内細菌を持たない無菌マウス(無菌状態で育てられた)と普通のマウスが、暗い箱の中と明るい外部とを自由に行き来できるようにしておいて、明るい場所と暗い場所で過ごすそれぞれの時間を計測しました。 光の当たる明るい外部を好むマウスが、不安感が少なくて大胆であるとみなしました。

実験の結果は、普通のマウスに比べて、無菌マウスの方が箱の外で過ごす時間が長く、高い場所に来ることも多いというものでした。 すなわち、無菌マウスの方が大胆だったのです。 次に、普通のマウスに抗生物質を投与したところ、(抗生物質で腸内細菌が壊滅したので)普通のマウスも警戒感や不安感が薄れて箱の外で過ごす時間が増えました。 抗生物質を飲ませたマウスでは、BDNF(脳由来神経栄養因子。 抗鬱・抗不安効果があると考えられている)という分子の量が増えていました。 そして、マウスへの抗生物質の投与を中止すると、BDNF の量が通常に戻り、マウスの大胆さも消滅しました。

2つ目の実験

2つ目の実験では、無菌マウスの中でも性格が内気なものに、大胆な性格の(普通の)マウスから採取した腸内細菌を植えつけました。 そうすると、内気だったマウスの警戒感が薄れて、活動的になりました。 逆に、活動的な(無菌の)マウスに内気な(普通の)マウスの腸内細菌を植えつけてみたところ、活動的だったマウスが内気になりました。

解説

これらの結果から、腸内細菌がマウスの不安感に影響を与え、それによってマウスの行動に変化が生じることが示唆されます。 ヒトでも同様の結果になるかどうかは不明ですが、ヒトの場合にも、過敏性腸症候群(IBS)の患者の多くに鬱症状や不安感が見られます。

腸内細菌がメンタル・ヘルスに影響する仕組みはわかっていませんが、迷走神経(脳から腹部にまで張り巡らされた神経)が消化管のリズミカルな動きを支配し、さらに(消化管の)感覚情報を脳に送っていることから、この神経が腸内細菌とメンタル・ヘルスの関係に関与している可能性が考えられます。