腸内細菌叢の改善により自閉症が緩和される可能性

(2013年12月) "Cell" 誌に掲載された California Institute of Technology の研究によると、腸内細菌の状態を改善することで自閉症スペクトラムの症状を軽減できる可能性があります。 この研究で、健康な腸から採取した腸内細菌群を ASD(に相当する疾患)のマウスに移植したところ、複数の異常な行動(不安様行動など)の大部分が消滅したのです。

研究者は次のように述べています:
「腸内細菌叢が不安感や、痛み、社会的・感情的な振る舞いなど様々な振る舞いに影響することは、これまでに複数の研究で示されていますが、腸内細菌叢に手を加えることで自閉症関連の振る舞いに影響を与えられることを示した研究は今回のものが初めてです」

研究グループは、「腸内細菌叢による自閉症の治療に期待し過ぎないように」と警告しつつも、今回の結果から、①ASD の症状のうちの少なくとも一部は腸と関連していること、そして②そのような症状についてはプロバイオティクスが治療に有効である可能性があるとしています。

今回の研究はマウス実験であるため、ヒトについても同じことが言えるかどうかを臨床試験によって確認する必要があります。

研究の概要
ASD 患者の一部に胃腸疾患が見られることは以前から知られていました。 そこで今回の研究では、人為的に炎症を生じさせた母マウスから生まれた子マウス(MIAマウス)を調べました。 MIAマウスでは、ヒトの ASD に相当する神経発達障害のリスクが増加します。
* MIA - maternal immune activation

調査の結果、自閉症的な症状を示す MIAマウスでは、胃腸に異変が生じ、腸内細菌叢が通常と異なっていることが明らかになりました。

そして、MIAマウスにヒトの腸内細菌の一種である "Bacteroides fragilis" を経口投与(注射ではなく、エサなどに混ぜて食べさせた)したところ、胃腸の異変と異常行動が緩和されました。

詳しく調べた結果、MIAマウスでは一部の代謝物の血中濃度が増加していること、そして、そのような代謝物の多くが "Bacteroides fragilis" により調整されていることが明らかになりました。

さらに、MIAマウスで増加していた代謝物のうちの1つを健康なマウスに投与したところ健康だったマウスで異常行動が見られました。 これにより、腸内細菌 ⇒ 代謝物 ⇒ 異常行動 という直接的な関係のあることが確認できました。