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善玉コレステロールにより乳ガンのリスクが増加する理由

(2013年9月)"Breast Cancer Research" 誌に掲載された研究により、HDLによる乳ガンのリスク増加の原因が、乳ガン細胞に存在するHDL受容体であることが解明されました。 この研究で、乳ガン細胞を培養したものにHDLを加えたところ、ガンの進行に関与するシグナル伝達経路が活性化し、乳ガン細胞が遊走(ガンの転移に相当する)し始めたのです。

HDLは心臓疾患を予防する効果があると考えられるため「善玉コレステロール」と呼ばれていますが、過去の研究では大量の HDL によって乳ガンのリスクが増加し、侵攻性も強くなる可能性も指摘されています。

研究グループはさらに、RNA サイレンシングを用いて乳ガン細胞における HDL 受容体(SR-BI 受容体)の発現を抑制することによってHDL 受容体の量を減らし、乳ガンの進行を促進するシグナル伝達経路の活性を減少させることに成功しました。 SR-BI 受容体の少ない乳ガン細胞では、通常の乳ガン細胞と比べて、細胞の増殖速度と遊走能力が衰えていました。

そして、マウスを使った実験でも、SR-BI 受容体の量を減らすことで乳ガンの腫瘍形成が減少することを確認できました。

研究グループは最後に、培養した乳ガン細胞の SR-BI 受容体を BLT-1 という薬で遮断するという実験を行い、乳ガン細胞の増殖、および腫瘍形成に関与するシグナル伝達を抑制することに成功しました。

今回の研究では、「悪性の乳ガンに HDL が関与しており、乳ガン細胞に存在する HDL 受容体を阻害することで乳ガンの成長を阻害できる」という説が裏付けられました。

研究者は次のように述べています:

「乳ガン細胞に存在する HDL 受容体の活性をブロックできれば、HDL の血管に対する有益な効果はそのままに、HDL の有害な面だけを抑制することができると考えられます」


研究者は今後の課題として、①SR-BI 受容体を阻害するのに最適な薬を特定する、②乳ガンの腫瘍が必要とする HDL コレステロールの量を突き止める(HDL が存在していても一定量以下であれば乳ガンのリスクへの悪影響は無いかもしれないということでしょう)という2点を挙げています。