聴力の衰えが認知能力の衰えにつながる可能性

(2014年1月) "NeuroImage" 誌に掲載された研究によると、聴力が衰えている高齢者では脳の萎縮が早まると考えられます。

過去の複数の研究で、聴力が衰えている人では記憶力・思考力が早く衰えることが示されていますが、その理由はわかっていません。 今回の発見から、聴覚障害のある高齢者では脳の萎縮が早まるために、記憶力・思考力の衰えが早まっているという可能性が考えられます。

研究の方法

56~86才の中高齢者126人を対象に、健康診断と聴覚検査を行ったのち、 MRI を用いて脳の映像を撮影し脳が変化する様子を追跡調査しました。 MRI 検査は10年間にわたって毎年行われました。

結果

126人のうちある程度の聴覚障害が見られたのは51人でした。 51人の大部分は、小さな声が聞き取れないといった程度の軽度の聴覚障害でした。

聴覚障害のある高齢者では脳の容積が速いペースで減少していました。 減少ペースの速さが特に顕著だったのは、脳の領域のうち音や発話の処理に関与している部分でした。 この領域は記憶や情報の処理にも関与しています。

聴力の衰えと脳の萎縮との相関関係は、喫煙習慣・血圧・糖尿病などの要因を考慮したうえでなお統計学的に有意でした。

解説

聴覚障害によって音や発話の処理に関与している領域が使われなくなるために衰え、その領域が記憶や情報の処理にも関与しているために、聴力の衰えによって記憶力・思考力の衰えが加速するのではないかと考えられます。

留意点

今回の研究だけでは、聴力の衰えと脳の萎縮との間に因果関係があると断言できません。 聴力の衰えと脳の萎縮はいずれも老化に伴う現象であり、脳の萎縮が早まる原因が聴力の衰えにあると断定できないためです。

また、今回の研究では認知能力のテストもしていないので、脳の早期萎縮が実生活にもたらす影響も不明です。

今後の予定
研究グループは、聴覚障害を治療することで脳の萎縮を鈍化させて認知症の発症を遅らせることが出来るかどうかに関心を抱いており、その点について調べる臨床試験を予定しています。