高濃度ビタミンCが酸化ストレスにより大腸ガン細胞を死滅させる

(2015年11月) "Science" 誌に掲載されたコーネル大学などの研究により、高濃度のビタミンCがKRAS遺伝子変異またはBRAF遺伝子変異がある結直腸ガン(大腸ガン)の腫瘍を殺すメカニズムが明らかになりました。

KRAS遺伝子またはBRAF遺伝子に変異がある大腸ガン(以下「KRAS大腸ガン」と「BRAF大腸ガン」)は増殖が速く、既存の治療法はあまり効果がありません。 大腸ガンの約半数のケースがKRAS大腸ガンまたはBRAF大腸ガンです。

研究の概要

オレンジ300個分に相当する大量のビタミンCによりKRAS大腸ガンまたはBRAF大腸ガンの成長が損なわれることが、細胞実験とマウス実験で確認されました。 抗酸化物質であるビタミンCが、KRAS大腸ガンとBRAF大腸ガンに対しては逆に酸化をもたらしていました。

明らかになったメカニズム
ビタミンC ⇒ デヒドロアスコルビン酸

ヒトの動脈のように酸素が豊富な環境では、ビタミンC(アスコルビン酸)が酸化されてデヒドロアスコルビン酸になります。 アスコルビン酸は細胞内に入れませんが、デヒドロアスコルビン酸はGLUT1(グルコース輸送体の一種)により細胞内へと入れます。

こうして細胞内へと入ったデヒドロアスコルビン酸が中で何をしているのかについては、これまでよくわかっていませんでした。

デヒドロアスコルビン酸がガン細胞を酸化に導く

今回の研究では、デヒドロアスコルビン酸がガン細胞の内部においてトロイの木馬のような働きをすることが明らかになりました。 デヒドロアスコルビン酸がガン細胞内に入り込むと、ガン細胞に備わる抗酸化物質がデヒドロアスコルビン酸をアスコルビン酸に戻そうとし、その過程においてガン細胞の抗酸化物質が枯渇するためにガン細胞が酸化ストレスにより死滅していたのです。

正常な細胞との違い

ガン細胞ではない健康な細胞もGLUT1を発現しますが、KRAS/BRAF大腸ガンの細胞は生存と成長に要するグルコース(ブドウ糖。 これもGLUT1により細胞内に運ばれる)の量が多いために、GLUT1を普通の細胞よりも遥かに大量に備えています。

さらに、KRAS/BRAF大腸ガンの細胞では生み出される活性酸素種(ROS)の量が多いために、生存に必要となる抗酸化物質の量も多くなります。

他のガンへの適用

上記のメカニズムは、GLUT1を大量に発現する他のガン(腎細胞ガン・膀胱ガン・すい臓ガンなど)にも当てはまる可能性があります。

留意点
次の点に注意が必要です:
  • 今回の研究は細胞実験とマウス実験であり、人体でも同じような結果になるとは限りません。
  • ビタミンCの作用は酸化に関するものだけではないため、高用量のビタミンCが正常な細胞や免疫細胞に及ぼす影響も調べる必要があります。
  • この治療法においては、ビタミンCを経口服用するのではなく静脈注射するのが適当だと思われます。 経口服用は吸収効率が悪いため、ビタミンCの血中濃度がガン細胞に対して毒性を発揮するほどには高くなりません。
  • 最近行われたフェーズ1臨床試験によれば、今回のマウス実験で用いられたのに相当する用量のビタミンC注射であれば十分に安全だと思われますが、ビタミンCの適切な用量は現時点では不明です。