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高脂肪食によって腸の細胞がガン化しやすくなる

(2016年3月) 高脂肪・高カロリーの食事により様々なガンのリスクが増加することが知られていますが、"Nature" 誌に掲載されたマサチューセッツ工科大学の研究により、高脂肪食によって腸の細胞がガン化しやすくなることが明らかになりました。

この研究ではマウス実験により、高脂肪食により腸において幹細胞(*)や前駆細胞(†)が増えることが示されました。

(*) 腸の幹細胞は腸の上皮に存在し、腸上皮を形成する様々なタイプの細胞を生み出す。

(†) 幹細胞から分化して生まれる、最終的な分化細胞の前段階に当たる細胞。 幹細胞と最終的な分化細胞との間に位置する中間的な存在。
研究者は次のように述べています:
「高脂肪食により幹細胞だけでなく前駆細胞の性質も変わり、その総合的な影響で腫瘍の形成が増加します。 高脂肪食が与えられている環境下においては、前駆幹細胞も幹細胞的な性質を獲得して腫瘍原性を有するようになります」
研究の方法

マウスに普通のエサまたは60%を脂肪が占める高脂肪のエサを9~12ヶ月間にわたり与えるという実験を行い、肥満が関与するガンと幹細胞との関係を調べました。 参考までに、米国人の通常の食事の脂肪率は20~40%です。

結果

高脂肪食を与えられたグループは普通のエサを与えられたグループに比べて、BMIが30~50%増え、腸の腫瘍も多く発生しました。

幹細胞
高脂肪食のグループは、腸の幹細胞にも明確な変化が生じていました。 まず、腸の幹細胞の量が増えていました。 そしてこれらの幹細胞は、隣接するニッチ細胞からのインプットを受けずに行動することが出来るようになっていました。
腸の幹細胞は幹細胞の活性を調節する細胞(ニッチ細胞)に囲まれていて、通常はニッチ細胞の「幹細胞あるいは分化細胞を作れ」という指示に従っているのですが、高脂肪食のグループでは幹細胞が独自の行動を取れるようになっていました。
前駆細胞
高脂肪食のグループでは、前駆細胞が幹細胞のように振る舞うようになっていました。 通常は数日である前駆細胞の寿命が延び、マウスから採取した前駆細胞を培養すると幹細胞と同様に小型の腸を形成できるようになっていたのです。
「これはとても重要なことです。 腸の腫瘍は幹細胞が原因であることが少なくありませんが、高脂肪食によって幹細胞が増えるのみならず、前駆細胞まで幹細胞のように腫瘍の原因となる変異を獲得しうるということなのですから」
PPARδ
高脂肪食のグループでは、PPARδ(ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体δ)という脂肪酸のセンサーが高脂肪食に反応して、細胞がエネルギー源として炭水化物の代わりに脂肪を使えるようになる代謝プロセスのスイッチをオンにしていました。
普通のエサのグループにPPARδの受容体を刺激する薬物を投与したときにも、この代謝プロセスのスイッチがオンになりました。
PPARδは、この代謝プロセスのスイッチを入れるだけでなく、幹細胞の性質を大きく左右する遺伝子群にも影響を及ぼしているように見受けられました。