慢性的な高血糖が体に悪い理由

(2015年5月) "Proceedings of the National Academy of Sciences" オンライン版に掲載されたジョンズ・ホプキンス大学(米国)の研究により、糖それ自体は毒ではないのに慢性的な高血糖が体に悪い理由の解明が進みました。 出典: Molecular Link Between High Glucose, Metabolic Disease May Offer New Strategies To Control Diabetes

研究の方法

今回の研究では、糖尿病のネズミと健康なネズミとで心臓から採取したミトコンドリアの中に存在する2種類の酵素の量がどう異なるかを調べました。 慢性的な高血糖が細胞中のミトコンドリア(栄養をエネルギーへと変換する)に悪影響を及ぼすことが過去の研究で明らかにされています。

調査対象となった酵素は、O-GlcNAc と呼ばれる分子をタンパク質に付加する「O-GlcNAcトランスフェラーゼ」という酵素と、O-GlcNAc をタンパク質から除去する「O-GlcNAcアーゼ」という酵素です。

結果
調査の結果、糖尿病のネズミのミトコンドリアには O-GlcNAcトランスフェラーゼが通常よりも多く、その一方で O-GlcNAcアーゼが少ないことが明らかになりました。 研究者は次のように述べています:
「糖尿病のネズミと健康なネズミとで酵素の量が異なるとは思っていましたが、ここまで差があるとは思いませんでした」
今回の研究ではさらに、糖尿病のネズミでは通常であればミトコンドリア膜に埋め込まれている O-GlcNAcトランスフェラーゼの多くがミトコンドリア内部へと移動してしまっていることも明らかになりました。
ミトコンドリアにおけるエネルギー生産には、ミトコンドリア膜に埋め込まれている複数の酵素複合体による相互作用が必要となりますが、O-GlcNAcトランスフェラーゼもこのような酵素複合体の1つです。
解説
糖尿病のネズミに見られた O-GlcNAc 関連の異常によりミトコンドリアのエネルギー生産効率が悪化し、それによってエネルギー生産時に副産物として発生する熱の量が増えて細胞へのダメージ(フリーラジカル)も増加するようになります。
エネルギー生産効率が悪いと発熱量が増えるというのは、LEDライトに対する白熱電球と同じですね。
こうして増加したフリーラジカルに対応するために肝臓で抗酸化プロセスが開始されるのですが、それに付随してブドウ糖の生産量が増えるために血糖値がさらに増加します。