塩分の過剰摂取を続けていると血圧抑制の安全機構が作動しなくなる?

(2015年1月) " Neuron" 誌に掲載されたマギル大学などの研究によると、塩分を長期間にわたって過剰に摂取し続けると、脳に異変が生じて、血圧上昇を防ぐために体に備わっている安全機構が作動しない体質になる可能性があります。出典: Blame it on your brain: salt and hypertension

この研究で、ネズミに一定期間にわたり塩分を大量に与えたところ、バソプレシンという血圧上昇ホルモンの放出に関与するニューロンに、BDNF(脳由来神経栄養因子)が関与する変化が起こり、このニューロンが動脈圧を検知する回路(これが血圧上昇を防ぐためのメカニズムなのでしょう)による制御を受け付けなくなりました。

ただし、ヒトでもマウスと同じようになるかどうかを今後の研究で確認する必要があります。 研究者は「(現段階では色々と不明ですが)とりあえず、塩分摂取量をほどほどにしておくのが良い」と述べています。

論文要旨
以下は、プレスリリースの元となった論文の要旨です:

食事から摂取する塩分により高血圧が促進されるメカニズムは解明されていない。 これまでの研究で、塩分摂取量に応じて血漿 [Na+] と重量オスモル濃度が上昇し、神経脳下垂体からのバソプレシン(VP)放出が促進されることは確認されている。

VP血中量が高いと血圧が高くなることがあるが、VPのこの作用は通常は動脈圧受容器によるVPニューロンのGABA性阻害により阻止される。

慢性的に塩分を大量摂取したネズミでは、VPニューロンの圧受容器による阻害がTrkB受容体のBDNFに依存する活性およびKCC2発現量の低下を介して損なわれ、それによって阻害性のGABA性シグナル伝達が阻止された。 また、塩分の大量摂取によってネズミのVPニューロンが自発的に発火するペースが速まり、血液中のVPによって動脈圧の増加が促進されていた。

これらの結果から、食事に含まれる塩分が中央ホメオスタシス回路(central homeostatic circuit)におけるニューロトロフィンに誘導される可塑性を介して血圧に影響し得ることが初めて示された。