誠実な人ほど午後に不誠実になる

"Psychological Science" 誌(2013年10月)に掲載されたハーバード大学などの研究によると、ウソをつかない、インチキをしない、盗まないという類の自制心は、朝起きてから時間がたつほどに弱くなっていきます。 したがって、午前中よりも午後のほうが、人は不誠実になります。

研究グループによると、その理由は、疲労や、休息の不足、同じ判断の繰り返しによる自制心の磨耗だと考えられます。 この研究では2つの実験を行いました。 詳細は次の通りです。

1つ目の実験
この研究で行われた1つ目の実験は、大学生たちに、PCの画面上に表示されるドット(点)の数をかぞえて、画面の左側と右側とのどちらにドットが多く存在するかを報告させるというものでした。

この作業に対しては報酬が支払われました。 ただし、支払われる報酬の基準は「正しい答え」ではありませんでした。 「右側のドットが多い」と報告すれば、それが間違っていても(実際には左側の方が多くても)10倍の報酬をもらえたのです。 したがって、ウソをつくことによって、ペナルティーを課されることはなく、被験者の自制心(この自制心は「報告する答えは正しくなくてはならない」という責任感あるいは倫理観に由来するのでしょう)だけが正しい答えを報告するためのインセンティブとなっていたわけです。

この実験の結果、午前8時から正午の時間帯よりも、正午から午後6時の時間帯のほうが、ウソをつくケースが増えていました。 研究グループはこの現象を「朝の道徳効果」と名づけています。

2つ目の実験
研究グループは次に、"_ _RAL" や "E_ _ _ C_ _" などの未完成な単語の欠けている部分を学生たちに補わせるという実験を行いました。

その結果、午前中には、"MORAL"(道徳) や "ETHICAL"(倫理)のように生真面目な単語が出来上がることが多かったのですが、午後には "CORAL"(珊瑚)や "EFFECTS"(効果)などの単語になるケースが増加していました。

こちらの実験は、道徳意識(moral awareness)が顕在化している程度を調べるという目的で行われたようです。

誠実な人ほど時間帯による変化が激しい
今回の研究では、「道徳離脱(moral disengagement)」の度合いが低い人ほど、午前中と午後の間の誠実さの落差が激しくなっていることも明らかになりました。 道徳離脱とは、非倫理的な行為を行っても罪悪感や苦悩を感じないことを言います。 つまり、誠実で真面目な人ほど、午前中から午後にかけての堕落の度合いが強かったというわけです。 不誠実な人間は午前中から平気でズルをするのですから、落差が無いのも当然ですね。

誠実度を数値で表すと次のような感じでしょうか。

誠実な人: 100(午前) ⇒ 50(午後)
不誠実な人: 0(午前) ⇒ 0(午後)

今回の発見の利用方法
研究グループは、企業などの組織内において非倫理的な行為を抑制するのに今回の成果を利用できるのではないかと期待しています:

「例えば、午前中よりも午後に、顧客や従業員の非倫理的な行為に警戒するといった利用法が考えられます。

また、自己を律するのにも、あるいは教師や親、責任者が子供や部下を監督するのにも、時間帯による倫理性の変化を考慮するのが効率的であると考えられます」