世帯収入が少ないと認知機能の低下が早く進む恐れ

(2016年9月) "American Journal of Preventive Medicine" に掲載されたマイアミ大学の研究によると、世帯収入が少ない人は認知機能の低下が早く進む恐れがあります。

研究の方法

米国に住む18~30才の男女 3,400人ほど(白人と黒人)の世帯収入を20年以上にわたり追跡調査して、低収入が認知機能に及ぼす影響を調べました。

世帯収入の調査は 1985年から 2010年のうちに6回行いました。 2010年(この頃の平均年齢は50才)に認知機能のテストを行い、データを次の4つのグループに分類して認知機能テストの結果と照らし合わせました:
  1. 追跡期間中に1度も低収入とならなかったグループ
  2. 追跡期間中に低収入であったのが追跡期間全体の1/3未満だったグループ
  3. 追跡期間全体の1/3から100%近くの期間を低収入で過ごしたグループ
  4. 追跡期間中ずっと低収入だったグループ
低収入の定義
この研究では、世帯収入が米国の貧困基準の2倍に達しない場合を「低収入」とみなしました。 米国の貧困基準は変動するので、低収入の基準となる金額も変動します。 追跡期間中の貧困基準(四人家族の場合)は、およそ次のようなものでした:
  • 1990年: 2万7千ドル
  • 1992年: 2万9千ドル
  • 1995年: 3万1千ドル
  • 2000年: 3万5千ドル
  • 2005年: 4万ドル
  • 2010年: 4万5千ドル
2010年当時のドル円相場は80~90円ほどだったので、4万5千ドルを円に直すと360万円~400万円程度の世帯収入となります。 参考までに、2010年の日本の民間平均給与は412万円でした。
結果
追跡期間のあいだ常に低収入だったグループは、追跡期間中に1度も低収入とならなかったグループに比べて、認知機能テストの成績が劣っていました。
言語記憶力のテスト(Rey Auditory Verbal Learning Test)で0.92ポイント、処理速度のテスト(Digit Symbol Substitution Test)で11.6ポイント、実行機能のテスト(Stroop test)で3.5ポイント低かった。

経済的な苦境(低収入の状態をどれだけ苦しいと感じているか)を感じている場合にも、認知機能テストの成績が悪くなっていました。

解説
高学歴の人たちのデータに限って分析をしても同様の結果となったことから、認知機能が低いから低収入で苦しむ羽目に陥ったのではなく、低収入という環境により認知機能が低下するのだと考えられます。