腫瘍の酸性度と侵攻/転移性

(2019年3月) マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究グループが腫瘍の酸性度と侵攻/転移性について調べたマウス実験の結果を "Cancer Research" 誌に発表しています。出典: How tumors behave on acid

腫瘍に酸性度の高い部分が何ヶ所も存在することは以前から知られていました。 こうした酸性度の高い部分は通常は酸素が不足する腫瘍の奥深くに見られます。 腫瘍は血液が十分に供給されないため酸素不足となる部分がよく生じますが、そうした部分で酸性度が高くなるのだと考えられてきたのです。

しかし今回の研究では、腫瘍の表面にも酸性度が高い部分の存在すること、そしてそうした部分のために腫瘍の侵攻性や転移性が増すことが明らかになりました。

プレス・リリースの概要

乳酸で酸性度が増加

マウスの乳ガンの腫瘍を用いて酸性度が高い領域の分布を調べたところ、酸素が欠乏する腫瘍内部だけでなく、腫瘍の周辺部にも酸性度の高い領域が存在しました。

腫瘍表面の細胞の多くは好気性解糖と呼ばれる細胞代謝にシフトしており、それによって乳酸が生み出されていました。 この乳酸のために腫瘍表面でも酸性度が高くなるのだと考えられます。

酸性度の高い領域に存在するガン細胞では、ガンの侵攻や転移に関与する遺伝子が活性化していました。

酸性度を緩和してみた

研究グループは腫瘍の酸性度を緩和すればどうなるかと考え、マウスの飲み水に炭酸水素ナトリウム(重層)を添加してみました。 すると、マウスの腫瘍の酸性度が緩和され遺伝子発現状況が正常な水準に近づきました。

別の実験では、炭酸水素ナトリウムの投与によりマウスのガン転移が軽減されるという結果でした。 ただし、炭酸水素ナトリウムはヒトでの忍容性が低いのでガン治療に使用するのは現実的ではありません。