肝臓組織の再生能力に優れる「ハイブリッド肝細胞」を発見

(2015年8月) "Cell" 誌に掲載されたカリフォルニア大学サンディエゴ校などの研究により、肝細胞の中にとりわけ肝臓組織を再生する能力に優れたタイプのもの(ハイブリッド肝細胞)が存在することが明らかになりました。出典: Newly Discovered Cells Regenerate Liver Tissue Without Forming Tumors

今回の研究の大部分はマウス実験により行われましたが、研究チームはヒトの肝臓でも同じような細胞を発見しています。

肝臓の再生能力

あらゆる臓器の中で肝臓は最も再生能力に優れています。 健康な肝臓の一部を移植するだけで肝硬変や肝炎などを治せることがあるのも肝臓の再生能力のお陰です。

かつては肝臓の再生能力は卵形細胞という成体幹細胞のお陰だと考えられていましたが、近年の研究により卵形細胞は肝細胞にはならず胆管細胞になると結論付けられています。

そういうわけで研究チームは、肝臓再生において新たな肝細胞の供給源となるモノを探ることにしました。

研究の内容

研究チームは、四塩化炭素というありふれた毒性物質により慢性肝障害が生じた後に肝細胞を補充する役割を担う細胞を追跡していて、門脈三つ組(portal triad)と呼ばれる肝臓の部位に特殊なタイプの肝細胞群が存在しているのに気付きました。 そして、この肝細胞群が慢性肝障害の後に大量に増殖して肝臓組織を補充していたのです。

この肝細胞群が通常の肝細胞に似ているけれども胆管細胞の遺伝子の発現量が少ないことから、研究チームはこの肝細胞群を「ハイブリッド肝細胞(hybrid hepatocyte)」と名付けました。

ⅰPSCと違って安全?

ハイブリッド肝細胞は幹細胞ではありません。 人工多能性幹細胞(ⅰPSC)という再生医療への利用が期待されている技術があり、病んだ肝臓を回復させ肝不全を防ぐための方法としても研究されていますが、ⅰPSCは増殖を制御できるという保証が無いために腫瘍化のリスクが付きまといます。

研究チームがハイブリッド肝細胞の安全性を調べるために、肝臓ガンを発症したマウスを使った3つの実験を行ったところ、いずれの実験においても腫瘍中にハイブリッド肝細胞の徴候は見られませんでした。 この結果に基づき研究チームは「ハイブリッド肝細胞は、肥満に起因する肝炎や発ガン性化学物質により引き起こされる肝臓ガンに寄与しない」と結論付けています。

コメント
研究者は次のように述べています:
「ハイブリッド肝細胞は病んだ肝臓を修復するのに最も効果的ですし、致命的な肝不全を細胞移植によって防ぐうえで最も安全な方法です」