(2016年5月) "Gastroenterology" 誌に掲載されたミシガン大学の研究により、FODMAP(Fermentable Oligo-Di-Monosaccharides and Polyols)と呼ばれる成分の含有量を極力減らした食事(低FODMAP食)が過敏性大腸症候群(IBS)患者の症状軽減に有効であることが確認されました。 ただし、低FODMAP食は、医師および栄養士の指導のもとで行うことが推奨されます。 (出典: Clinical Trial Demonstrates Success of Low FODMAP Diet)
研究の方法
90人超のIBS患者を2つのグループに分け、そのうちの一方にのみ栄養士の指導のもとで低FODMAP食を6週間にわたり続けてもらいました。 もう一方のグループには普通の食事を続けてもらいました。 ただし普通の食事のグループも、IBSの症状が出ないようにカフェインとアルコールを控え、一度にたくさん食べないようにしてもらいました。
結果
低FODMAP食のグループでは、50%超の患者において腹痛が大いに改善されました。 もう一方のグループで腹痛が改善されたのは20%に過ぎませんでした。 膨満感・下痢・急を要する便意などの症状においても、低FODMAP食のグループの方が改善が顕著でした。
さらに、生活の質(QOL)を4週間目の時点で調べたところ、低FODMAP食グループの61%が「改善された」と回答しました。 もう一方のグループでは、この数字は27%でした。
類似研究
- デンマークで行われ "World Journal of Gastroenterology"(2017年5月)に掲載された研究でも、20~70才のIBD 患者78人(7割超が女性)を被験者とする臨床試験を行って、低FODMAP食を6週間続けた後にIBSの症状が改善するという結果でした。
- "Clinical Nutrition" 誌(2017年6月)に掲載されたメタ分析でも、2つのランダム化比較試験と4つの前後比較研究のデータ(被験者数は合計で319人)を分析して、FODMAP食を続けたIBD患者で下痢・腹部膨満感・腹痛・疲労感・吐き気が軽減され、腸の状態に関する主観的な感覚が改善するという結果になっています。 ただし便秘は軽減されていませんでした。
IBD = 炎症性腸疾患。 潰瘍性大腸炎やクローン病。
低FODMAP食
FODMAPの種類
スタンフォード大学によると、食事に含有されるFODMAPは次の5種類です:- 果糖(果物・ハチミツなど)
- 乳糖(乳製品)
- フルクタン(小麦・たまねぎ・にんにく・イヌリンなど)
- ガラクタン(豆類・味噌・豆乳。 豆腐にはあまり含まれていない)
- ポリオール(イソマルト、キシリトール、マンニトール、ソルビトールといった甘味料; アボカド、アプリコット、さくらんぼ、ネクタリン、桃、梅などの核果)