運動後の水風呂に筋肉痛や疲労回復の効果は無かった(3/3ページ)

水風呂の筋肉疲労回復の効果はプラシーボ効果?

(2014年11月) "Medicine and Science in Sports and Exercise" 誌に掲載されたビクトリア大学(オーストラリア)の研究で、水風呂による筋肉疲労回復の効果が主にプラシーボによるものであると思われる結果となりました。

水風呂とプラシーボ効果

マラソンのように関節に繰り返し負担がかかるような運動や、フットボールのようにぶつかり合うスポーツをした後に水風呂に入る選手は少なくありません。

水風呂によって、筋力や、パワー、柔軟性、筋肉痛・疲労・ダメージの回復が早まる可能性を示唆する研究は多々ありますが、水風呂にこれらの効果がある理由はわかっておらず、水風呂の効果はプラシーボ効果でしかない可能性もあります。

プラシーボ効果は、治療効果だけでなく競技パフォーマンスにも影響すると思われます。 例えば、2008年に行われた研究では、カフェインのプラシーボを投与することによって疲労感が8%減少し、レッグ・エクステンション(筋力トレーニングの一種)における筋力が12%向上するという結果になっています。

研究の方法

この研究では、水風呂に筋肉の疲労を回復する効果が実際にあるのか、それとも水風呂の効果がプラシーボ効果でしかないのかを調べました。 「疲労回復に効果がありますよ」とウソをついた風呂(実はただのぬるま湯)と水風呂とで効果を比較したのです。

偽の疲労回復風呂はただのお風呂に過ぎませんから、それによる効果は主にプラシーボです。 したがって、水風呂による回復が偽の疲労回復風呂と同程度であれば、水風呂の効果はプラシーボでしかないと考えられるというわけです。

試験では、日頃から趣味でスポーツをやっている若い健康な男性30人にサイクリング・マシンで30秒×4回を最大速度でこいでもらった後に、3つのグループに分かれて次のいずれかの風呂に入ってもらいました:
  1. 10℃程度の水風呂
  2. 35℃程度のぬるま湯(比較対照用)
  3. 35℃程度の偽の疲労回復風呂(プラシーボ)

3のグループはインチキ・パンフレットを読まされて「偽疲労回復風呂には新しく開発された疲労回復オイルが入っていて、疲労回復と競技パフォーマンスの向上に水風呂と同程度の効果があるのだ」とすっかり信じ込んだうえで偽疲労回復風呂に入りました。 実際に風呂に投入されたのは、疲労回復オイルではなく単なる皮膚洗浄剤でした。

結果

各グループを対象に行った意識調査において、自分たちが入る風呂の効果に対する評価が1のグループと3のグループとで同程度でした。(つまり1と3では同程度のプラシーボ効果が予期された)

そして、サイクリング・マシンで運動をしてから48時間後に行ったレッグ・エクステンション(筋力回復度をチェックするためのテスト)において、1のグループと3のグループは同程度の筋力回復を示しました。

2のグループと3のグループの比較では、両グループの風呂の違いが皮膚洗浄剤が入っているか否かだけであったにも関わらず、3のグループの方が2のグループに比べて(レッグ・エクステンションのテストで)筋力の回復幅が大きくなっていました。

研究者は次のように述べています:
「今回の結果は、思い込みが運動のパフォーマンスに強く影響するという説を裏付けるものです」
水風呂に効果があると信じている人の心情に配慮してか、研究者本人は水風呂の効果がプラシーボ効果によるものである可能性について直接的に言及していませんが、比較対照用の2のグループと偽風呂に入った3のグループの違いはプラシーボ効果によるものでしょうし、その3のグループと1のグループの筋力回復速度が同程度だったのですから、水風呂の効果は主にプラシーボによるものだということなのでしょう。