低湿度環境では運動中の体温を下げるのに氷水よりも常温の水が良い

(2016年2月) 運動中の体温上昇が運動能力低下の一因となることが過去の研究で示されていますが、"Medicine&Science in Sports&Exercise" 誌に掲載されたオタワ大学などの研究で、運動中に氷水(*)を飲んでも常温の水を飲んだときと体温は変わらないという結果になりました。 出典: Do Ice Slushy Drinks Really Keep You Cooler in Hot Weather?
(*) 1.5℃の冷水とカキ氷を2:1の割合で混ぜた、みぞれ状の氷水。 これを運動中に飲むのが最近のトレンドだそうです。

冷水や氷水を飲むことで運動パフォーマンスの低下を緩和できるとする研究が複数存在しますが、今回の研究はこれらの研究と異なる結果となりました。

研究の方法

平均年齢25才の男性9人に、高温・低湿度(気温33.5℃、相対湿度23.7℃)の環境でエアロバイク(サイクリング・マシン)による75分間の運動をしてもらいもらいました。

運動は2回行ってもらい、そのうちの1回には体温と同じ温度(37℃)の水を、そしてもう1回には氷水を飲んでもらいました。 水または氷水を飲むタイミングは、運動開始から15分後、30分後、および45分後でした。

そして次の2種類の熱損失を、常温の水の場合と氷水の場合とでそれぞれ算出して比較しました:
  • 飲み物の冷たさによる熱損失
  • 汗の蒸発による熱損失
結果
氷水を飲んだときと常温の水を飲んだときとで、体温(直腸と皮膚で測定した)に違いがありませんでした。 氷水を飲むことによって汗をかく量が大幅に減り、それに伴って汗の蒸発により失われる体温も減っていたためです。 水の冷たさによる熱損失と発汗による熱損失のトータルは、常温の水を飲んだときよりも氷水を飲んだときの方が少ないほどでした(*)
(*)> つまり、飲んだ氷水に体温を奪われて熱損失が増える以上に、氷水を飲んで発汗量が減ることによって熱損失が減っていた。

氷水を飲んだときの熱損失のトータルが常温の水を飲んだときよりも少ないのに体温が同じであったことから研究チームは、腹部の温度受容体が深部体温や皮膚体温とは無関係に中央神経系に働きかけて体温調節反応の変化を誘発するのではないかと考えています。
アドバイス
研究チームは次のように述べています:

「競技パフォーマンスという観点からは、気温が高く湿度が低い環境で運動をしている最中には氷水よりも常温の水(水温は自由)を飲む方が良い」

「ただし氷水も、高温多湿の環境(*)で運動をする場合や運動前に体温を下げる目的で飲んでおく場合には有効だと思われる」
(*) 湿度が高いと汗が蒸発しにくいため、汗をかいても体温が下がりにくい。 そして体温が下がらないので汗が出続ける。