知能に対する考え方(固定的 vs. 努力しだい)と学校の成績の関係

(2018年6月) "Frontiers in Psychology " 誌に掲載されたメタ分析によると、「努力により自分の知能は向上する」と考えている学生(中学生~大学生)のほうが学業成績が全般的に優れているようです。

努力と知能の関係に対する2つの考え方

努力と知能の関係に対する考え方(implicit theories of intelligence、略して「ITI」)は次の2つに大別されます:

  1. 知能や能力は固定的であり、自分の出した成果はその固定的な知能/能力の結果に過ぎないという考え方(entity belief)。 このような考え方の持ち主は、周囲の人たちに自分の能力を示し肯定的な評価を得ることを目的として「パフォーマンス的な目標」を設定する傾向にある。

    成績が悪いのを「自分の能力が足りていないからだ」と考えて諦めてしまい、努力で成績を向上させようとしない傾向にある。 大学在学中に自尊心が低下しがち。

  2. 努力しだいで知能は向上するという考え方(incremental belief)。 このような考え方の持ち主は、自分の能力を向上させたり新しい能力を獲得したりすることを目的として「学習上の目標」を設定したり、困難な課題に挑んだり、効果的な戦略を採用したりする傾向にある。

    成績が悪いと「自分の努力が足りないせいだ」と反省して、成績向上のために努力する傾向にある。 大学在学中に自尊心が上昇しがち。

メタ分析の方法

中学生~大学生を対象にITIと学力の関係を調べた46の研究のデータを分析しました。 データに含まれる人数は40万人超でした。

「学業成績」の内容は、言語系科目の成績・数学の成績・学校の成績全般(定期テストの点数など)といったものでした。

結果

「努力しだいで知能は向上する」という考え方の学生のほうが、性別にかかわらず学業成績において優秀でした。
「努力しだいで知能は向上する」では成績との間に弱い相関関係が見られたが、「知能は固定的である」では見られなかった。
言語系科目や数学の成績に限っても、「努力しだいで知能は向上する」と学生のほうが「知能は固定的である」と考える学生よりも成績が優秀でした。
「努力しだいで知能は向上する」と「知能は固定的である」のいずれも 言語系科目や数学の成績との間に相関関係が見られたが、「知能は固定的である」のほうは相関関係が微弱だった。

地域別

研究が行われた地域別に見ると、「努力しだいで知能は向上する」という考え方と学業成績の優秀さとの関係はアジアやオセアニアでのみ明確でした。

特に、欧州では「知能は固定的である」という考え方と学業成績との間に相関関係が見られました。 このような結果になった背景には欧州の社会的な事情があるのかもしれません。