睡眠時間が短い人は血管の健康のバロメーターが思わしくない

(2019年4月) "Experimental Physiology" 誌に掲載されたコロラド大学の研究で、睡眠時間が短い人は血管の健康のバロメーターとなる物質の発現量(血中濃度)が好適でないという結果になりました。

研究の方法

睡眠時間が7時間以上の男女12人(平均年齢55才。男性6人)と睡眠時間が7時間未満の男女12人(平均年齢55才。男性7人)とで、血管の炎症と機能(ひいては心血管疾患のリスク)に関与することが知られる7種類のmiR(*)の発現量を比較しました。

この合計24人はいずれも、非喫煙者で血中脂質が正常範囲内で、医薬品を使用しておらず、顕在的な心血管疾患(心臓病や脳卒中)を抱えてもいませんでした。
(*) miR-34a、miR-92a、miR-125a、miR-126、miR-145、miR-146a、および miR-150 の7種類。

結果

睡眠時間が短いグループは miR-125a、miR-126、および miR-146a の3種類のmiRの発現量が統計学的に有意に低くなっていました(低下幅はそれぞれ60%、40%、60%程度)。

残りの4種類に関しては差が見られませんでした。 研究グループは、34a と 92a は睡眠時間が短い場合に多いと予想していました。(各miRについては下記)

解説

睡眠時間が短い(7時間未満)と疾病リスクや死亡リスクが増加すること、そしてこうしたリスク増加が主に炎症の増大や血管内皮の機能不全によるものであることが知られていますが、今回の研究によると、このような睡眠時間と炎症や血管内皮の機能不全の関係にmiRの異変が関係している可能性があります。

7種類のmiRについて

miR-125a、miR-126、miR-146a

  1. miR-126 の発現量が多いと血管の拡張能力や機能が高い。
  2. miR-126 は血管内皮の線維素溶解機能の調節にも携わっており、miR-126 が少ないと血栓が形成されやすくなると考えられている。
  3. miR-125a が発現量が少ないとET-1(Endothelin 1。血管を収縮させる)の生産/放出量が増加する。
  4. 総じて言えば、miR-126 と miR-125a の減少は睡眠不足に伴う血管内皮機能不全や心血管疾患のリスク増加に関与している可能性がある。
  5. miR-146a の発現量が少ない人には血管の炎症やアテローム動脈硬化がよく見られることや、miR-146a の発現量が少ないと冠動脈疾患のリスクが高いこと、マウスに miR-146a を補給すると血管の炎症が緩和されたことが、これまでの研究で示されている。

miR-34a と miR-92a

  1. miR-34a は細胞の老化と機能不全を促進する。
  2. 冠動脈疾患の患者は健常者に比べて miR-34a の発現量が2倍だというデータがある。
  3. miR-34a の発現量と心不全や心臓死との関係を示す研究もある。
  4. miR-92a は血管内皮の修復機能・eNOS(内皮型一酸化窒素合成酵素)の生産量・血管内皮機能を低下させてしまう。
  5. アテローム性動脈硬化が進行している人は miR-92a の発現量が多い。

miR-145 と miR-150

  1. miR-145 が関与する血管平滑筋細胞の増殖減少でアテローム性動脈硬化の進行が鈍ることも示されている。
  2. miR-150 は、免疫細胞の活性やサイトカインの分泌をを調節することでアテローム性動脈硬化を抑制したり、血管内皮や血管内皮前駆細胞の機能を促進することで血管の健康状態を向上させたりする。
  3. miR-145 や miR-150 の血中濃度が低いとCVDのリスクが増加することを示す研究が存在する。