インスリンにはドーパミンを増やす作用もあった?

(2015年10月) "Nature Communications" 誌に掲載されたニューヨーク大学の研究により、インスリンがドーパミンの放出量の調節にこれまで考えられていた以上に強く関与していることが明らかになりました。 脳に存在するインスリンの量が多いとドーパミンの放出量も増えるというのです。
インスリンは血糖値と食後の満腹感をコントロールするホルモンとして知られています。 ドーパミンは脳の領域のうち報酬や快楽に関与する神経伝達物質です。
インスリンが増えるとドーパミンも増える
この研究で行われた実験のうちの1つで齧歯類(マウスとラット)に糖類を食べさせたところ、糖類を処理するためにインスリン活性が上がったのと時を同じくして、齧歯類の脳の線条体領域(*)においてドーパミンが20~55%増加しました。
(*) 線条体領域は脳がドーパミンの効果を感じる場所であると同時に、報酬(栄養など)を受け取ったことに対する体の反応を支配する場所でもあります。
低/高カロリー食のドーパミン分泌への影響

この研究では、低カロリーまたは高カロリーのエサをラットに食べさせるという実験も行いました。 低カロリーのエサを与えられたグループでは脳におけるインスリン量の増加に対する感度が10倍に増加していました。 これはつまり、このグループにおいてはドーパミンの放出を促進するのに必要なインスリンの量が通常のエサを与えられた場合の1/10で済むということです。

これに対して、高カロリーのエサを与えられたグループでは線条体領域のインスリンに対する反応性がすべて失われていました。

インスリン抗体を用いた実験
報酬としての飲み物(糖分の入った飲み物)に、インスリン抗体(インスリンのシグナル伝達を遮断する)の注射またはプラシーボの注射を組み合わせたところ、ラットたちは常にインスリン抗体の注射とセットになった方を常に好みました。 インスリン抗体によりインスリン信号伝達が手付かず(*)のままとなるためにドーパミンが増加します。
(*) 手付かず - "intact"。 この "intact" は「損なわれていない」という意味ではなく「行われない」という意味かもしれません。
コメント
研究者は次のように述べています:
「今回の結果によると、齧歯類が(そしておそらくヒトも)インスリンの放出量が多い低脂肪・高炭水化物で食事を好むのは、そのような食事によってドーパミンの放出量が増えるためかもしれません」