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他人の顔色をうかがってばかりの人は老化が早い?

(2017年10月) "BMC Medical Genetics" 誌に掲載された山形大学の研究で、対人感受性(*)が高い人は細胞老化の指標であるテロメア(*)が短いという結果になりました。
(*) 下記参照。

研究の方法

平均年齢42才の日本人男女159人の対人感受性とテロメアの長さを調べて、対人感受性とテロメアの長さとの関係を分析しました。 対人感受性の調査にはISPMを用いました。

結果

対人感受性(4つの評価項目の合計)が強い人はテロメアが短いという結果でした。 4つの評価項目を個別的に見ると、テロメアの長さとの関係が統計学的に有意だったのは臆病さ(下記参照)の強さだけでした。

解説

研究チームによると、対人感受性が強い人のテロメアが短くなる理由としては次の2つが考えられます:
  1. 生活習慣への悪影響。 これまでの研究で、対人感受性が強い人は過食の傾向があったりニコチン(喫煙)やアルコール(飲酒)に依存することが多いという結果になっています。 そして、こうした生活習慣がある人はテロメアが短いとする研究も存在します。
  2. ストレス。 対人感受性が強い人はストレスのホルモンであるコルチゾールが多く分泌されている可能性があります。 そして、生体外実験や動物実験では、ストレスによりテロメアが短くなることやテロメラーゼ(テロメアの長さを回復する酵素)の活性が低下することが示されています。

関連研究

"Psychological Medicine" 誌(2014年)に掲載されたオランダの研究では、32~79才(平均53才)の男女 3,432人を調査して神経質な人はテロメアが短いという結果になっています。

言葉の説明

テロメア

テロメアは、染色体の両端に存在して、染色体同士が癒着したり変質したり(ガンの原因になる)しないように保護している部分のことです。 染色体が靴紐であるとすれば、テロメアは靴紐の先端のキャップに該当します。

テロメアは細胞が分裂するたびに(つまり老化により)短くなってゆき、テロメアが失われた染色体は不安定になります。 通常はテロメアが一定以下の長さになった時点で「細胞老化」により細胞が破壊されますが、このような破壊を免れた細胞はガン化します。

テロメアはこのような性質のために、肉体の老化度を測るための指標として用いられます。

対人感受性

対人感受性(interpersonal sensitivity)という言葉は2つの意味で使われているようです。

1つは良い意味で、"It takes one to know one..." という論文によると、対人感受性とは「非言語的な情報から他人の能力・状態・気質を把握する能力」のことです。 また、"Encyclopedia of Human Relationships" では対人感受性を「他人のことを把握し、適切に対応する能力」のことであると定義しています。

これに対して、"Interpersonal Sensitivity Measure(ISPM)" と呼ばれる性格調査のアンケートでは、「対人感受性」という言葉が「過剰な対人感受性」という悪い意味で使われています。 この記事における「対人感受性」は、こちらの意味です

対人感受性が過剰である(ISPMのスコアが高い)人は、他人の言動に気を回しすぎて人間関係に疲れたり、他人の期待に応えようとして頑張りすぎてしまったりします。 ISPMでは次の4つの項目に基づき対人感受性を評価します:
  1. 対人意識性: 他人の振る舞いや感情に対して神経質であること。
  2. 分離不安: 自分にとって重要な人から離れることへの不安。
  3. 臆病さ: 他人の気分を害するのではないかという恐怖のために自己主張ができない。
  4. 自我脆弱性: 自分自身の嫌いな部分を人前にさらせない。他人に拒絶されるのが怖いから。

当初のISPM("Australian and New Zealand Journal of Psychiatry" に1989年に発表された)には「同意欲求(他人に認められたいという気持ち)」という項目もありましたが、後に除外されたようです。 この 1989年の研究によると「過剰な対人感受性」の大本は自己評価の低さ神経質にあるようです。 神経質な人で対人感受性が過剰となりがちであることは "Comprehensive Psychiatry" 誌(2013年)でも示されています。

テロメアの長さを維持する方法

自分の性格を直すのは容易ではありませんが、生活習慣は自分の努力しだいで改善することができます。 そして、テロメアの長さは生活習慣にも影響されます。

テロメアが短くなる要因

喫煙・肥満・劣悪な食事(糖分の摂り過ぎなど)・喫煙・大気汚染・過度の飲酒・心理的ストレス・酸化ストレス・慢性炎症によってテロメアが短くなるペースが速まることが複数の研究で示されています。

運動

運動量が多い人や座って過ごす時間が短い人はテロメアが長いという結果になった研究があります。 また、運動によってイリシンというホルモンの分泌量が増加しますが、このイリシンの血中量が多い人ほどテロメアが長いことを示す研究もあります。

食生活

食生活がメディテラネアン・ダイエットと呼ばれる地中海地方の伝統的な食生活に近いとテロメアが長いという結果になった研究があります。 マウス実験ですが、摂取カロリーを減らすことでテロメアが短くなりにくいという結果になった研究もあります。

個別的な食品カテゴリーでは、DHAEPA(魚に含まれる脂肪酸)や果物・野菜がテロメアの長さを維持するのに有益だと思われます。 逆に、糖類加工肉(ソーセージやハムなど)などはテロメアの長さを損なう恐れがあります。