鉄サプリメントに含まれる程度の量の鉄分でも細胞にダメージ?

(2016年2月) "PLOS ONE" に掲載されたインペリアルカレッジ・ロンドン(英国)の研究によると、細胞はこれまで考えられていた以上に鉄の毒性に弱いかもしれません。 細胞実験において、鉄のサプリメントに含まれる程度の鉄分の量で達成される濃度の鉄溶液により10分間のうちにDNAに損傷が生じたのです。
鉄について
鉄は人体において酸素の輸送に深く関与しています。 鉄が不足すると貧血になります。 貧血の症状は疲労感や倦怠感などです。
経緯

研究のきっかけは、遺伝性出血性毛細血管拡張症という血管に異常が生じる疾患のために鉄のサプリメントを服用している患者たちから「鉄のサプリメントを服用すると鼻血がひどくなる」という報告を受けたことでした。

研究の概要
ヒトの血管内皮細胞を10μモル(*)の鉄溶液で処理してプラシーボで処理した血管内皮細胞と比較したところ、鉄溶液で処理した細胞ではDNA修復系が活性化し、その状態が6時間後にも持続していました。
(*) 鉄のサプリメントを服用したのちの鉄血中濃度と同程度の濃度。
コメント
研究者は次のように述べています:
「非常に高用量であれば鉄が細胞を傷つけることは既に知られていますが、今回の研究では、あくまでも生体外実験での話ではありますが、サプリメントを飲んだときに達する鉄血中濃度と同程度の鉄濃度でも細胞の損傷が引き起こされていました。 細胞はこれまで考えられていた以上に鉄に対して敏感なのではないかと思われます」

「この研究はごく初期の段階なので、今後の研究で今回の結果を確認する必要があります。 今回の発見が実際の人体にとってどのような意味を持つかも調べなくてはなりません。 生体内で機能中の血管では今回と異なる結果になる可能性もあります」

「とは言え今回の研究は、『鉄サプリメントをどの程度服用するべきなのか?』 という問題を議論する発端となるかもしれません。 鉄サプリメントに含有される鉄分の量は1日に食事で摂取することが推奨される量の10倍ほどです。 そしてこの含有量は50年以上前からずっと変わっていません。 今回の結果をきっかけとして、鉄サプリメントに含まれる鉄分の量について慎重に検討してみてもよいのではないでしょうか」
「食事以外で鉄分を余分に補給する必要がある人は少なくありません。 鉄サプリメントの服用に関して懸念がある人は医師に相談しましょう」