収めた税金が国民に還元されないと脱税が増える?

(2016年5月) 欧州では一般的に、スェーデン人が誠実であるのに対してイタリア人は不誠実であるというイメージが定着していて、イタリア人自身ですら自分たちにそういう性質があることを認めています。

そしてイタリアの財政難の原因がイタリア人の不誠実な性質に起因している(国民がきちんと納税していない)という認識が広まっていますが、"Frontiers in Psychology" 誌に掲載された欧州の研究によると、スェーデン人とイタリア人とで税金の支払いに関する誠実さの程度に違いはありません。出典: Are Italians or Swedes More Likely to Cheat on Their Taxes?

研究の方法

イタリアとスェーデンから募った被験者たちに、多くの国で採用されている税制度を反映する試験に参加してもらいました。

試験ではまず、試験開始時に得た金額を自主的に報告してもらいました。 この際、次の2点を被験者たちに伝えておきました:
  1. 金額を過少に報告したことがバレると罰金を課されること。
  2. 税金として徴収されたおカネが公共の利益のために使用されること。
結果

同一の状況下においては、イタリア人とスェーデン人の所得申告における誠実さに実質的な違いはありませんでした。 不正(所得を過少に申告する)を行う頻度はイタリア人の方が多かったのですが、スェーデン人の方が不正の程度がひどかったのです。

解説

現実の世界においては、イタリア人よりもスェーデン人の方がきちんと納税しています。 今回の試験で示された結果と現実の世界の状況とが異なる理由の大部分は、スェーデン人の方が「納めた税金がちゃんと国民に還元されている」と感じているためだと考えられます。

研究者は次のように述べています:
「『課税額を減らせば、きちんと税金を納める人が増える』 と考える人が多くいますが、今回の結果からすると政府が税金を効率的に使うことの方が大切であると思われます」

マネーガイドJP」によると、スェーデンは国民の負担率が65%と非常に高いのですが、そのうちの41.5%が国民に還元されています。 イタリアはおそらく、国民負担率に対して還元率がもっと少ないのでしょう。 日本の国民年金のような状態だとすれば、課された金額を払うのがバカらしくなるのも頷けます。

上記のリンク先によると、日本は国民負担率が39.5%と先進国中では最低クラスですが、還元率も24%と米国に次いで下から2番目です。 ただし、消費税率の8%への引き上げや社会保険量の増加などのために 2015年度には負担率が43.4%に増える見込みです。
関連研究

今回の研究は、EUが出資する"Willing to Pay? Testing Institutionalist Theories with Experiments" という名称の研究の一環として行われました。

"Willing to pay?..." でこれまでに行われた研究では次のような結果になっています:
  • 欧米諸国のすべてにおいて女性は男性よりも(納税において)誠実である。
  • あらゆる職業の中でエコノミスト(経済学の専門家)がもっとも不誠実で不正行為をすることが多い。
  • (今回と同様の)試験において高所得だった人の方が低所得だった人よりも不正行為をすることが多い。