(2017年8月) "Clinical Nutrition" に掲載された国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)などの研究で、マグネシウムの摂取量が多い人は冠動脈疾患(CHD)になるリスクが低いという結果になっています。
研究の方法
45~74才で心血管疾患やガンの病歴がない日本人8万5千人超を対象に、食生活に関するアンケート調査を行って食事から摂取するマグネシウムの量を推定し、その後15年間ほどにわたりCHDおよび脳卒中の発生状況を追跡調査しました。
そしてマグネシウムの摂取量に応じてデータを5つのグループに分け、グループ間でCHDや脳卒中のリスクを比較しました。
結果
追跡期間中に 4,110件の脳卒中と 1,283件のCHDが発生しました。
脳卒中
脳卒中に関しては男女ともに、マグネシウム摂取量が多くてもリスクが低下していませんでした。
CHD(男性)
マグネシウム摂取量が最低のグループに比べて、摂取量が最大のグループでは30%、摂取量が上から2番めのグループでは34%、それぞれCHDのリスクが低下していました。
CHD(女性)
マグネシウム摂取量が最低のグループに比べて、摂取量が真ん中(上からも下からも3番め)のグループはCHDのリスクが39%低下していました(ただし、P for trend = 0.241)。
男性にしても女性にしても、マグネシウムの摂取量が多いほど良いというわけではなさそうです。
関連研究
- "BMC Medicine" 誌に掲載されたメタ分析では、食事から摂るマグネシウムの量が多い人はCHDだけでなく脳卒中や心不全などのリスクも低いという結果になっています。 マグネシウム摂取量が100mg増えるごとに、CHDのリスクは8%、脳卒中のリスクは7%、心不全のリスクは22%下がるという計算になります。
- "American Journal of Clinical Nutrition" 誌に掲載されたメタ分析でも、食事から摂るマグネシウムの量が多い人やマグネシウムの血中濃度が高い人のCHDリスクが低いことが示されています。
- 高血圧の人ではCHDのリスクが増加しますが、"Nutrition Journal" に掲載されたメタ分析では、マグネシウム摂取量が多い人は高血圧のリスクが低いという結果になっています。1日あたりのマグネシウム摂取量が100mg増えるごとに高血圧のリスクが5%下がるという計算になります。
- "Hypertension" 誌に掲載されたメタ分析では、マグネシウムが不足している場合に限り、マグネシウムのサプリメントの服用により血圧がわずかに下がるという結果になっています。
マグネシウムについて
マグネシウムは、体内の300以上の生化学反応で必要とされます。 マグネシウムを十分に摂っておくことは、神経伝達・体温調節・毒素の排出・エネルギーの生産・健康な歯と骨にとって重要です。
マグネシウムは、不眠症・高血圧・便秘・偏頭痛・胆石・腎結石などの予防にも関わっています。 また女性では、生理時の症状あるいは更年期障害の緩和にマグネシウムが有効であることがあります。
マグネシウムの推奨摂取量
「日本人の食事摂取基準」によると、成人のマグネシウム推奨所要量(RDA)(*)は、男性では1日あたり320~370mg(年齢により多少異なる)、女性では1日あたり270~290mg(妊娠中は+40mg)というものです。
米国における成人のマグネシウムRDAは、女性で350mg/日、男性で420mg/日というものです。
(*) 健康な人の97~98%において必要量が満たされる1日あたりの摂取量の平均値。