筋肉のエネルギー効率を悪化させる注射

(2015年2月) 人体はダイエットと飢餓状態の区別ができません。 そのために、摂取カロリーを減らすと人体はエネルギーの消費効率を上げて(同じ運動でも消費カロリーが少なくなるようにして)体重が減らないように抵抗します。

"Molecular Therapy" 誌に掲載されたアイオワ大学の研究により、この「エネルギー節約モード」を解除させて筋肉によるエネルギー消費を増やす方法が考案されています。

といっても、この方法というのは家庭で自分で実行できるものではなくクスリを注射します。 さらに、今回の研究も未だマウス実験の段階なので、実際にヒトが使えるようになるのはまだ先の話です。

どのようなクスリなのか?

この薬は、ATP感受性カリウム(KATP)チャネルという膜タンパク質に作用します。 KATPチャネルは運動強度に関わらず運動時の骨格筋(内臓の筋肉ではない、いわゆる普通の筋肉)におけるエネルギー効率を強力に調節します。

KATPチャネルを撹乱する方法

研究チームはこれまでの研究で、KATPタンパク質の活性を変えることによって骨格筋のエネルギー効率が悪化してカロリー燃焼量が増えることを発見していました。

この発見を実際のダイエットに利用する方法として研究チームがまず思いついたのがKATPチャネルを撹乱する薬剤と遺伝子療法でしたが、どちらもヒトに対して用いるには支障がありました。 特に、KATPチャネル阻害剤は骨格筋のKATPチャネルだけでなく心臓のKATPチャネルまでもターゲットにしてしまうという危険な副作用がありました。

今回の発案

そこで今回の研究で考案されたのが、薬剤の注射により局所的にKATPタンパク質を消失させるという方法です。

注射に用いられたのはビボ・モルフォリノ(vivo-morpholino)と呼ばれる化合物で、この化合物にはKATPの生産を抑制する作用があります。

今回の研究でマウスの太腿にビボ・モルフォリノを注射したところ、太腿の筋肉においてKATPが消失しカロリー燃焼量が増加していました。 臓器だけでなく太腿付近の骨格筋への影響もありませんでした。 KATPを注射されたことによる筋肉の耐久力低下も見られませんでした。

今回考案された技術が実用化されれば、特に運動をしなくても注射一本で、家事や散歩などの日常的な身体活動をしているだけでカロリーが激しく燃焼してスリムな体型を保てるようになります。