低炭水化物・高脂肪の食事で体脂肪の減少ペースは増加しない。 エネルギー消費量は微増

(2016年7月) "American Journal of Clinical Nutrition" に掲載された米国の研究によると、肥満者がケトン食(低炭水化物で高脂肪の食事)を続けてもエネルギー消費量(EE)がわずかに増加するだけで体脂肪の減少ペースは増加しません。 そして、このEEの増加量というのも、最新の機器を用いなければ検出できない程度のものでしかありません。出典: Energy expenditure and body composition changes after an isocaloric ketogenic diet in overweight and obese men
ケトン食

ケトン食とは炭水化物の含有量が非常に少なく、その分脂肪分が多い食事のことです。 ケトン食を食べていると、体に蓄えられている脂肪が主なエネルギー源として用いられるようになります。

炭水化物の摂取量を減らし代わりに脂肪の摂取量を増やすと、脂肪がケトンと呼ばれる分子に変換されるようになります。 ケトンは、脳を初めとする全身の細胞によりブドウ糖の代替物として利用されます。
研究の方法
17人の肥満者に、研究チームが用意した高炭水化物の食事を4週間続けてもらい、その後、タンパク質の含有量が一定(*)のケトン食(カロリーは同じ)を4週間続けてもらいました。
(*) 「タンパク質の含有量が一定」は "with clamped protein" を訳したもの。
そして、①EE、②睡眠中のエネルギー消費量(SEE)、③呼吸商(RQ)(*)を毎週計測しました。 また、二重エネルギーX線吸収測定法を用いて、体組成(体脂肪などの比率)の変化を測定しました。 高炭水化物食の期間とケトン食の期間の、それぞれ最後の2週間には、二重標識水法(†)を用いて平均EEを調べました。

(*) 呼吸商(respiratory quotient)とは、体に取り込んだ酸素の量に対して生産される2酸化炭素の割合のことで、基礎代謝量(安静にしていても消費されるカロリー)の計算に用いられます。

(†) 二重標識水という特殊な水を用いてエネルギー代謝量を求めるという測定法。 エネルギー消費量の測定法のうち最も正確だとされています。 「DLW法」とも呼ばれます。
結果
高炭水化物食を食べていたときにもケトン食を食べていたときにも、1日あたりの摂取カロリーが300Kcalほど少なかった(*)分だけ、体重と体脂肪率が減っていました。
(*) 「研究の方法」のところに述べられていませんが、試験期間中に食べた高炭水化物もケトン食も、被験者のそれまでの食事よりもカロリーが少なかったのでしょう。

高炭水化物食を食べていたときに比べて、ケトン食を食べていたときにはEEが57kcal/日、SEEが89kcal/日、そして二重標識水法により測定した平均EEが151kcal/日増えていました。

RQはケトン食を食べていたときのほうが0.111減っていました(*)。 ケトン食を食べていたときには体脂肪の減少が鈍化していましたが、これは、タンパク質の利用が増えて除脂肪体重(筋肉の量)が減っていたのと合致します。

(*) Wikipediaによると、RQの算出は「体内から除去される二酸化炭素の量÷体内に取り込んだ酸素の量」という計算で行います。 算出結果は通常は1.0~0.7の値を取り、1.0に近いほど炭水化物が、そして0.7に近いほど脂肪が消費されたということになります。 冬眠前の動物のように炭水化物から脂肪を作り出す生物ではRQが1.0を超えます。

脂肪も炭水化物も水素・酸素・炭素で構成されていますが、脂肪に比べてブドウ糖などの炭水化物のほうが酸化が進んでいて代謝に必要な酸素が少なくて済むので、炭水化物の消費量が増えるとRQが高くなり、脂肪の消費量が増えるとRQが低くなるというわけです。

したがって、今回の結果でRQが0.1ほど減っていたということは、脂肪の消費量が増えたということになります。

(†)Vox によると、ケトン食を続けた4週間で減らせた脂肪の量が、高炭水化物食をしていたときに15日間で減らせた脂肪の量と同じだった。
結論
研究チームは結論として「体脂肪の減少量は増えなかったが、EEは微かに増えた」と述べています。