牛乳でお腹を壊す人は乳ガンなどになり難いが、それは単に...

(2014年11月) "British Journal of Cancer" に掲載された Lund University(スェーデン)などの研究によると、乳糖不耐性の人(*)では牛乳などの乳製品の摂取量が少ないために肺ガン、乳ガン、卵巣ガンのリスクが低下している可能性があります。
(*) 牛乳を飲むとお腹がゴロゴロしたり、下痢になったりする人。 ヨーグルトやチーズでは乳糖の一部~大部分が製造過程において取り除かれるために、牛乳に比べて乳糖不耐性が起こり難くなります。
乳ガンと卵巣ガンの罹患率は国によって大きく異なり、北米や西欧、北欧の国では罹患率が高く、東アジアや中央アフリカの国では低いことが知られています。 移民や双子を対象にした研究では、この罹患率の差が遺伝的な要因ではなく環境的な要因によるものであることが示唆されています。

乳製品の摂取量などの生活習慣の違いが、欧米における乳ガンと卵巣ガンの罹患率の高さの一因ではないかと疑われていますが、明確な結論は出ていません。

今回の研究では、乳糖不耐性の人では牛乳などの乳製品の摂取量が少ないために乳ガンと卵巣ガンのリスクが低下しているのかどうかを調べました。 さらに、牛乳の摂取量と肺ガンのリスクがいずれも IGF-1(インスリン成長因子1) というタンパク質と相関関係にあるので、肺ガンも調査項目に含めました。

乳糖不耐性のスェーデン人男女 22,788人の肺ガン、乳ガン、卵巣ガンの罹患率を調べて、乳糖不耐性ではない人たちのグループのデータと比較したところ、乳糖不耐性のグループでは出生地や性別に関わらず、これらのガンの罹患率が有意に低下していました。

乳糖不耐性のグループの標準化罹患比(SIR)の値は、肺ガンで0.55、乳ガンで0.79、卵巣ガンで0.55でした。
標準化罹患比(SIR)
環境省の文書によると SIR とは、「ある特定の状況下にある対象集団の罹患数と、その集団が罹患率の分かっている標準人口と同じ罹患率を有すると仮定したときに期待される罹患数との比」ということですから、ここでは多分、「乳糖不耐性のグループの罹患率÷乳糖不耐性ではないグループの罹患率」という計算をしたのでしょう。

したがって、乳糖不耐性のグループは乳糖不耐性ではないグループに比べて、肺ガンのリスクが-45%、乳ガンのリスクが-21%、卵巣ガンのリスクが-45%に低下していたということだと思います。
乳糖不耐性のグループでガンのリスクが低下していた理由として考えられるのは次の2点です:

  1. 牛乳摂取量が少ないためにカロリー摂取量が少ない。
  2. 植物性の乳飲料(たぶん豆乳を指す)の摂取。
研究者は次のように述べています:
「乳糖不耐性の人の血縁者でガンのリスクが減っていなかったことから、乳糖不耐性の人でガンのリスクが低下する理由は(遺伝子ではなく)食事内容にあると考えられます。

ただし、今回の結果を鵜呑みにするわけにはゆきません。 (牛乳の飲用とガンの罹患率のあいだに)因果関係があると決め付けるには材料が不足しているからです。 今回の結果を説明する要因を特定するための研究が必要です」