笑気ガスは心臓発作の原因にならない

(2013年6月) 笑気ガスとして知られている亜酸化窒素を手術前の麻酔と併用したときに、手術中あるいは手術後に心臓発作になるリスクが懸念されていましたが、ワシントン大学の研究によると、その心配はありません。

亜酸化窒素がビタミンB12を不活性化させるために、ホモシステイン(必須アミノ酸のひとつであるメチオニンの代謝における中間生成物)の血中濃度が増加し、これが心臓発作のリスクを増大させるのではないかと考えられていました。 しかし、今回の研究では、そのようなエビデンスが見つからなかったのです。

亜酸化窒素は、それ自体では患者の意識を奪うほどには強力でないため、他の麻酔と併用されます。 亜酸化窒素のビタミンB群やホモシステインへの作用は、亜酸化窒素の麻酔効果とは無関係です。

研究の方法

この研究では、冠状動脈疾患、心不全、またはそのた心臓発作のリスクとなる疾患を抱える患者500人の手術を2つのグループに分けて追跡調査しました。 手術はいずれも心臓以外の手術で、亜酸化窒素が使用されました。

一方のグループには、ホモシステインの増加を抑えるために、手術中にビタミンB12と葉酸を静脈注射し、もう一方のグループには何もしませんでした。

心臓発作が生じたかどうかは、患者たちの心臓トロポニンI を72時間にわたって監視することによって把握しました。トロポニンは心臓ダメージのマーカーであり、これが増加していると心臓にダメージが生じたことになります。

結果

このようにして行われた試験の結果、心臓発作に関しては両グループの間で何も違いが見られませんでした。 ビタミンBの投与によってホモシステインの増加が抑えられたグループと、もう一方のグループの間で心臓発作のリスクに違いは見られなかったのです。

この研究ではさらに、遺伝子変異体によるホモシステインの増加も調べました。 MTHFR 遺伝子が変異体であるとホモシステインの生産量が増加します。 したがって、このような遺伝子変異体を持つ患者に亜酸化窒素を投与すると、ホモシステインの量は急激に増加する(この研究でも非常に増加していた)のですが、MTHFR 遺伝子が変異体である患者のうち心臓発作になったのが3.1%でしかなかったのに対して、遺伝子変異体の無い患者での心臓発作発症率は4.7%でした。