学習後に熟睡すると、脳が学習内容に応じた成長の仕方をする

(2014年6月) "Science" 誌に掲載されたニューヨーク大学の研究によると、学習後に睡眠を取ることによって樹状突起棘(樹状突起から小さく突き出た棘の部分)が成長します。 ただし、樹状突起棘が成長するにはノンレム睡眠(深い眠り)でなくてはなりません。

今回の研究はマウス実験により行われたものですが、「新しく覚えたことを頭の中で強固なものとするには睡眠が必要である」 という説を支持する新たな材料となります。

研究者は次のように述べています:

「学習と記憶に睡眠が関与していることは長らく知られています。 睡眠をきっちりと摂らなければ学習効率が落ちるというやつです。 しかし、睡眠と学習の関係の背後にあるメカニズムは、これまで不明でした。

この研究では、睡眠によって樹状突起分岐(樹状突起>樹状突起分岐>樹状突起棘)における接続形成が促進されることが示されました。 この接続により長期記憶が促進されます。 今回の研究ではさらに、同じ1つの神経細胞でも学習の種類によってシナプスが形成される樹状突起分岐が異なることが明らかになりました。 このことから、学習が非常に特定的な構造の変化を脳にもたらす可能性が示唆されます」
研究の内容
今回の研究の成果は次の4つです:
  1. この研究ではまず、神経細胞のタンパク質が発光するように遺伝子改造したマウスに、徐々に速度を増してゆく回転棒の上でバランスを取ることを学習させ、その前後で、発光性タンパク質を発光させる機能のあるレーザ走査顕微鏡を用いて、運動皮質における樹状突起棘の成長を調査しました。

    その結果、回転棒の訓練から6時間のうちに樹状突起分岐に複数の棘が新しく生えていました。
  2. 研究チームは次に、棘の成長に睡眠が与える影響を調べるための実験を行いました。

    この実験では、上記と同じ遺伝子改造マウスを2つのグループに分けて、一方のグループには回転棒のトレーニングを1時間させた後に7時間眠らせ、もう一方のグループには回転棒のトレーニングを1時間させた後に眠らせませんでした。

    その結果、眠らせてもらえなかったグループでは7時間眠ったグループに比べて、同じ1時間のトレーニングを行ったにも関わらず樹状突起棘の成長が有意に少なくなっていました。
  3. 研究チームはさらに、行う作業の種類によって樹状突起棘の成長が見られる樹状突起分岐が異なることも明らかにしました。 例えば、回転棒の上を前向きに走るときと後ろ向きに走るときとでは異なる分岐で棘が成長するという具合でした。
    「この実験によって、新しい事柄を学習することで神経細胞が特定の樹状突起棘に接続を形成することが明らかになりました。 樹状突起を樹木、樹状突起分岐を枝、そして樹状突起棘を木の葉だとすると、異なる物事の学習では木の葉が繁る枝が異なるということです。 新しい物事の学習は、新しい枝に木の葉を繁らせるということになります」
  4. 今回の研究では、マウスが作業を学習するときに活性化していた運動皮質の脳細胞が、ノンレム睡眠の最中に再活性化していることも明らかになりました。 そして、この再活性化の邪魔をすると、樹状突起棘の成長が阻害されました。
    「運動皮質中の接続形成においてノンレム睡眠が非常に大切であることが示唆されます」