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他人の気持ちを察するには文学作品。 大衆小説ではダメ

(2013年10月) "Science" 誌に掲載された研究によると、他人の心情を察することの出来る人間になるには文学作品(literary fiction)を読むのが有効です。

研究の方法

この研究では、書物を文学作品、大衆小説、ノンフィクションという3つのジャンルに分類して、5つの実験を行い、文学作品を読むことが、"ToM (Theory of Mind)"という他人の心情を察する能力にもたらす効果を測定しました。

実験の内容は、被験者にモノクロ写真に写った俳優の目を見て、俳優が演じるキャラクターの気持ちを読み取ってもらうなどでした。

結果
5つの実験の結果、文学作品(*)を読んだグループで、ToM のテストの成績が他の二つのグループよりも良好でした。 大衆小説(†)を呼んだグループとノンフィクションを読んだグループの間で ToM に関する差は見られませんでした。

(*) Louise Erdrich の "The Round House"、Jesmyn Ward の "Salvage the Bones"、Alice Munro の "Corrie" など。

(†) Gillian Flynn の "Gone Girl"、Danielle Steel の "The Sins of the Mother" などのベストセラー小説。
解説

今回の結果により、他人の心情を察する能力を養う上では、どんな本でも良いのではなく、文学作品を読むのが効果的であることが示されました。 文学作品を読んだグループでは、作品の内容や主題が大きく異なっているにも関わらず、ToM のテスト結果は似通っていました。

大衆小説と文学作品との違い

研究者によると、スリラーやロマンスなどの大衆小説と文学作品との違いは、①文学作品ではキャラクターの性格の違いの描き分け方が大衆小説よりも微妙でリアルであるために、読者がその違いを主体的に見つけ出さなくてはならない(この部分は、ソース記事が小難しくて意味不明だったので、私なりに解釈して噛み砕きました)、②大衆小説と比べて話の展開よりもキャラクターの描写に比重が置かれている、③単一のキャラクターの視点で話が進行するケースが少ないなどの点であり、このような違いのために、文学作品では読者が作者の視点に立って欠けている部分を補う必要があります。

例えば Alice Munro の小説でも、作者が自分の考えを読者に提示していません(作者がキャラクターの性格を直截的に述べずに、言動や仕草によって間接的に描写するということでしょうか)。 読者自身が、現実の世界で他人を言動から判断するのと同様にして、どういったキャラクターであるかを推測する必要があるのです。
つまり、大衆小説では作者が現実の世界で見かけた他人の言動からその人の性格を判定した結果(つまり作者の判定)を小説中に描写するのに対して、文学作品では作者が現実の世界で見かけた他人の言動を自分の判断を交えずにそのまま描写するため、文学作品の読者は文学作品を読むときに現実の世界で行うのと同じ判断を要求されるということでしょうか。