(2017年6月) "Nutricion Hospotalaria" 誌に掲載されたリスボン大学の研究によると、線維筋痛症の症状軽減に「低FODMAP食」が役立つ可能性があります。
線維筋痛症とIBSと低FODMAP食
線維筋痛症(FM)はリウマチのような疾患で、その主な症状は全身におよぶ慢性痛と「こわばり」ですが、過敏性大腸症候群(IBS)を併発する人が少なくありません。
低FODMAP食(LFD)とは、FODMAP(Fermentable Oligo-Di-Monosaccharides and Polyols)と呼ばれる成分の含有量を極力減らす食事法のことで、これまでの研究でIBSの症状軽減に有効であることが示されています。
研究の方法
FMを患っている女性31人に8週間にわたりLFDを続けてもらい、その前後でFMの症状に関するアンケート調査や体重測定を行いました。
女性たちの年齢は51才、FMの病歴は10年、体重は69kg、BMIは27.4(いずれも平均値)でした。
結果
LFDを続けることによって、FMの症状とIBSの症状がいずれも全般的に軽減されました。 FMの重症度スコア(*)は21.8ポイントから17ポイントへと改善し、IBSの重症度スコア(†)は275ポイントから158ポイントへと改善しました。(*) Fibromyalgia Severity Questionnaire
(†) Irritable Bowel Syndrome-Symptom Severity Scale個々の症状別に見ても、慢性痛・こわばり・筋無力症・腹痛・頭痛・睡眠の質・便秘・下痢・膨満感のすべてにおいて、ある程度の改善が見られました。 抑鬱や苦悩といった精神面の症状も改善していました。
類似研究
"Scandinavian Journal of Pain" に掲載されたリスボン大学の研究でも、線維筋痛症と診断されてから平均10年が経過している平均年齢38才の女性38人にLFDを実践してもらって、体の痛み・胃腸の症状・生活の質が改善されるという結果になっています。
低FODMAP食について
FODMAPの種類
スタンフォード大学によると、食事に含有されるFODMAPは次の5種類です:- 果糖(果物・ハチミツなど)
- 乳糖(乳製品)
- フルクタン(小麦・たまねぎ・にんにく・イヌリンなど)
- ガラクタン(豆類・味噌・豆乳。 豆腐にはあまり含まれていない)
- ポリオール(イソマルト、キシリトール、マンニトール、ソルビトールといった甘味料; アボカド、アプリコット、さくらんぼ、ネクタリン、桃、梅などの核果)
低FODMAP食に使える食品
FODMAPをあまり含まない食品には次のようなものがあります:今回の研究における低FODMAP食
今回の研究では、各被験者に合わせた低FODMAP食(LFD)のプランが用意されました。 LFDは栄養バランスが偏る恐れがあるので、栄養バランスが偏らないように配慮しました。
研究チームが用意したLFDプランは、フルクタン・乳糖・ガラクタン・ポリオールの摂取を控え、果糖を摂り過ぎないように気をつけるというものでした。 具体的には次のように食生活を変更しました:- フルクタン: 小麦・ライ麦・たまねぎ・ニンニクを控え、その代わりに米・とうもろこし・スペルト小麦・オーツ麦やグルテンを含まない穀類・ガーリックオイルを食べる。
- 乳糖: 乳製品や乳糖を含む食品を控え、その代わりに乳糖を含まない代替食品を食べる。
- ガラクタン: キャベツと豆類を控え、その代わりに人参・セロリ・さやいんげん・レタス・かぼちゃ・じゃがいも・トマトを食べる。
- ポリオール: アプリコット・さくらんぼ・ネクタリン・西洋すもも(プラム)・カリフラワー・キシリトール(甘味料)・ソルビトール(甘味料)を控え、その代わりにグレープフルーツ・檸檬・キウィ・ライム・パッションフルーツなどの果物を食べる。
- 果糖: 果糖や異性化糖(ブドウ糖果糖液糖など)を含有する加工食品・りんご・マンゴー・桃・梨・すいか・ハチミツを控え、その代わりにバナナ・ぶどう・ブルーベリー・苺・メロン・オレンジを食べる。