近年における大気汚染の改善も十分ではない

(2016年4月) "American Journal of Respiratory and Critical Care" に掲載されたハーバード大学の研究により、近年における大気汚染の改善も子供の肺の健康にとっては十分ではないことが 示されました。出典: Even Low Levels of Air Pollution Appear to Affect a Child’s Lungs

米国の諸都市では 1990年代から大気汚染が大いに改善されており、例えばボストンでは 1996~2006年の間にPM2.5(*)が30%減ています。

(*) PM2.5とは粒子径が2.5μm以下の粒子状物質(Particulate Matter)のことで、日本語では「微小粒子状物質」とも呼ばれます。 PM2.5の発生源は火力発電所・工場・自動車・バイク・焚き火~森林火災などです。(参考記事: 焚き火の煙が心血管にも悪影響

PM2.5はサイズが小さいので、肺の奥深くにまで入り込みます。 複数の研究でPM2.5と心臓発作や脳卒中による入院患者数の増加との関係が指摘されています。
研究の方法
マサチューセッツ州東部のボストン(大気汚染は比較的軽微)に住む母子614組の自宅と幹線道路の距離から子供たちのPM2.5と黒色炭素(*)への暴露量を推算し、子供たちが8才になったときに肺機能(肺活量)の検査を行いました。
(*) 化石燃料(ガソリンや石炭)や木などが不完全燃焼するときに生じる煤(すす)。 数日間~数週間にわたり空気中に漂い地球温暖化の一因となる。
結果
主な結果は次の通りです:
  • 肺機能の低下は、幹線道路から最も近くに住んでいた子供で最も顕著だった。 自宅から幹線道路までの距離が100mの子供は、この距離が400mの子供に比べて肺機能が平均6%低かった。
  • 肺機能低下への影響が大きかったのは、昔の大気汚染よりも最近の大気汚染だった。
  • 引越しや自宅周辺の大気汚染源の変化などにより1才より後に空気の質が大きく改善された子供は、そうでない子供に比べて肺機能が良好になっていた。
研究の弱点
この研究の弱点として研究者は、肺機能の計測を1度しか行わなかったことと、データに含まれる子供の属性(*)が似通っていたことを挙げています。
(*) おそらく人種や世帯収入?