少量の鉛でも痛風に悪影響

"Annals of Internal Medicine"(2012年8月)に掲載された研究によると、血液から検出される鉛の量が比較的低濃度でも、痛風のリスクが増加する原因になります。

これまでの研究でも、多量の鉛で痛風のリスクが増えることは知られていましたが、今回の研究により、現在の基準で成人の許容量以下みなされる程度の血中鉛濃度でも痛風になるリスクが増えることが判明しました。

現在の(米国の)基準では、100mlの血液中の鉛が25mcg(マイクログラム。1,000mcg=1mg)以下であれば許容範囲内だとされており、先進国では、ガソリンや塗料から鉛を排除するなどの政策により鉛との接触が減っているため、通常の生活では十分に基準値以下の血中鉛濃度になります。 米国の場合には、100mlあたり3mcg程度です。

しかし、今回の研究によれば、1.2mcg/100ml の血中鉛濃度から痛風のリスクが増加し始めます。

過去の他の研究でも、血中鉛濃度は比較的低レベルでも、心臓病による脂肪や腎臓病の悪化などのリスクが増加させることが示唆されています。

この研究では、米国で定期的に行われる健康調査において40才以上の米国人6,100名ほどが血液検査を受け、健康状態とライフスタイルに関するアンケートに答えた際のデータを用いました。 6,100人のうち、痛風だと回答したのは5%以下でした。

血中鉛濃度が上がるにつれ痛風のリスクは増加しており、血中鉛濃度が最高の人たちでは6%が痛風でした。 一方、血中鉛濃度が最低の人たちで痛風なのは2%でした。 血中鉛濃度で上位25%に含まれる人たちが痛風になるリスクは、同じく下位25%に含まれる人たちの4倍という結果になりました。

上位25%といっても、その中での血中鉛濃度の差は 100ml あたり 2.6~27mcg と大きく、大部分は血中鉛濃度の許容範囲以下でした。 25mcg/100ml 以上だったのは3人のみ、そして 10mcg/100ml 以上だったのは 31人でした。

低濃度の血中鉛で痛風のリスクが増加する理由は明らかでありませんが、研究者は、少量の鉛であっても腎臓による尿酸の排泄を妨げるのではないかと考えています。

研究者によれば、血中鉛濃度が高い人の多くは、鉱山や建設など仕事で鉛と接触することのある人たちで、それ以外の人たちでは血中鉛濃度がゼロであることも珍しくないそうです。

しかし、肥満などの痛風のリスク要因が存在しないのに痛風を患っているのであれば、鉛を疑ってみてもよいでしょう。

鉛への接触は、前述の職業によるもの以外では、タバコの煙や鉛を含有するほこりを吸い込む場合などが考えられます。 例えば、鉛含有量が規制される前の古い塗料が剥がれ落ちたのがホコリに混じったりする可能性があります。

その他にも、水道管に鉛が使われている古い家では水道水に含まれている可能性がありますし、車の改造や、釉薬を用いる陶芸、ステンドグラス作りなどが趣味の場合には、これらも鉛との接触の原因になり得ます。

血中鉛濃度が著しく高い場合には、キレート療法とよばれる治療法や、血中から鉛を吸い取る薬がありますが、いずれも副作用が伴う上に、低い血中鉛濃度でしかなくて痛風だという患者に効果があるのかどうかも不明です。

米国の疾病対策予防センターは、子供の最大鉛許容量を 10mcg/100ml から 5mcg/100ml へと引き下げました。 発達中の脳への鉛の悪影響が特に大きいためです。

また、ドイツでは、血中鉛濃度の許容量は、女性で 7mcg/100ml、男性で 9mcg/100ml となっています。

日本の基準値を検索してみたところ、 独立行政法人産業技術総合研究所というところの出している鉛のリスク評価書に、「安全性をみて日本における健康影響の血中鉛濃度レベルを 10μg/dl としている」という文がありました。