基準値以下の鉛でも学校の成績が悪化

(2015年4月) "Environmental Health" 誌に掲載されたイリノイ大学などの研究によると、10μg/dL未満という低レベルの鉛に暴露するだけでも学業成績が下がる恐れがあります。 鉛には神経毒性があり、知能の低下や注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの問題行動の原因になると考えられています。
Anne Evens, Daniel Hryhorczuk, Bruce P Lanphear, Kristin M Rankin, Dan A Lewis, Linda Forst and Deborah Rosenberg. The impact of low-level lead toxicity on school performance among children in the Chicago Public Schools: a population-based retrospective cohort study. (Licensed under CC BY 4.0)

過去にも同様の研究が複数行われ同様の結果となっていますが、今回の研究はそれらの研究よりも大規模なうえに、低体重や早産など学校の成績に影響する要因を考慮しているので信頼性が高いと言えます。

研究の方法

1994~1998年のうちに米国のシカゴで生まれた子供たち 58,650人を対象に、生後から 2006年までの間に血液検査を行って、鉛の血中濃度と小学校3年生のときの全州一斉テストのにおける国語および算数の成績とを照らし合わせました。

結果
58,650人のうち鉛の血中濃度が10μg/dL未満だった 47,168人(男女比はほぼ半々)においても、血中鉛濃度と国語および算数の成績とのあいだに逆相関関係が見られました(つまり、血中濃度が高いほど成績が悪かった)。
10μg/dL未満というのは、米国疾病管理予防センター(CDC)が血中鉛濃度の推奨値として定める基準です。

鉛の血中濃度が10μg/dL未満の子供達において、血中鉛濃度が5μg/dL増えると成績が一定水準未満に達しないリスクが国語でも算数でも32%増加していました。

5μg/dL未満という低レベルの範囲の血中鉛濃度に限っても、血中鉛濃度の増加によるテストの成績への悪影響が見られました。

これらの結果は、貧困・人種・遺伝・母親の教育水準・出生時低体重・早産など学校の成績に影響すると考えられる要因を考慮したうえでのものです。

農林水産省の資料(PDF)によると、日本人の鉛摂取量は 1980年前半に比べて 2012年には1/4程度にまで減っています。 ガソリンなどへの鉛の使用規制が進んだためでしょう。 しかし鉛は、米などの食品中にも微量ながら含まれているため完全に排除することは出来ません。

愛知県衛生研究所によると、血中鉛の正常上限値は40μg/dLです。 鉛の暴露源として自動車の排気ガスやタバコの煙に注意が必要だともあります。