薬剤の83%が患部に届く、肺ガン用の吸入式抗がん剤

(2013年5月) オレゴン州立大学などの研究グループが、吸入して使用する肺ガン用の抗がん剤(以下、「吸入式抗がん剤」)を開発しました。 この吸入式抗がん剤は、生体外実験および動物実験において、肺以外の臓器への副作用が少なく、肺の腫瘍の治療効果は大きいようであるという結果が出ています。

この吸入式抗がん剤は、既存の抗がん剤に、ナノ粒子と、低分子干渉RNA(siRNA)を組み合わせたもので、これら3つの組み合わせにより、動物実験では、肺の腫瘍がほとんど消滅してしまいました。

ナノ粒子はホコリよりも小さな粒子であるため、吸入が容易で、ガン細胞にひっつき易いという性質があります。 この性質を利用して、ガン細胞のもとに抗がん剤とsiRNAをきっちり送り届けます。

siRNA には、ガン細胞を脆弱にする作用があります。 ガン細胞が有する薬物耐性は主に2種類です。 1つはポンプ耐性(pump resistance)と呼ばれるもので、ポンプのような作用によって薬物を自細胞から排出してしまいます。 もう1つが、非ポンプ耐性(nonpump” resistance)と呼ばれるもので、この耐性によりガン細胞が死に難くなります。 吸入式抗がん剤の成分である siRNA には、ポンプ耐性と非ポンプ耐性の両方をガン細胞から取り除き、抗がん剤が効くようにする作用があります。

肺ガンの患部は局所的(肺の一部だけ)でないことが多いため、肺ガンの治療では抗がん剤が大きな役割を果たしますが、静脈注射で投与される従来の抗がん剤は、副作用の大きさと、薬が患部である肺に届きにくいのがネックとなっています。

従来の肺ガンの抗がん剤は、抗がん剤が肝臓や、腎臓、脾臓に蓄積されるばかりで、肝心の肺にまで届くのは投与された薬の一部でしかありませんが、吸入式抗がん剤では、抗がん剤を吸入するために、注射で投与される場合と違って有効成分が劣化せずに患部に届きます。

今回の研究で、患部に届く抗がん剤の量を調べたところ、注射で投与した場合では23%に過ぎなかったのに対して、吸入で投与した場合は83%でした。

研究者は次のように述べています:
「従来の抗がん剤では(効率の悪さゆえに)腫瘍を抑制するだけでしたが、吸入式抗がん剤はガン細胞に効率よく届くので、腫瘍を消滅させてしまうことが出来るようです」
吸入式抗がん剤の実用化は、特許の取得が完了し、複数の試験を行い、さらに臨床試験で効果が確認されてからとなります。